2023年7月、北の都札幌の歓楽街すすきので、日本中を震撼させる殺人事件が発生した。
夜の街が軒を連ねるススキノの一角にあるラブホテル街にあるホテルで、頭部を切断された男性の遺体が発見されたのだ。
そして世間をさら驚かせたのは3週間後。
事件の容疑者として逮捕されたのが、29歳の女性とその両親であり、一家3人が共謀して男性を殺害したとの衝撃の結末である。
殺害実行者と見られる当時29歳の田村瑠奈の父親は、精神科医の田村修。
精神科医とその娘が、父親よりも年上の男性をラブホテルで殺害し、切断した頭部を自宅に保管していた事件に日本中が驚愕した。
さらに実行者とされる娘の田村瑠奈が、ホテルで男性を刺殺する様子が動画で撮影していたり、自宅で保管されていた男性の頭部を弄ぶ姿が撮影された映像が見つかるなど、その狂気的な犯行ぶりが明らかにされている。
また最も注目に値するのが、父親で精神科医の田村修氏が、娘の田村瑠奈を溺愛し、周囲の誰もが感じるほど過保護に育てていたことだ。
四六時中我が子のことを気にかけ、子供に異常なまでに過保護な親はヘリコプターペアレントと言われている。
父親の田村修氏は、娘の言うことが絶対で、何でも言うことを聞いてくれるお父さんだったようだ。親が子供を溺愛するあまり、親子の立場が逆転し、子供が権力を握ってしまう現象は珍しくないらしい。
精神科医の父親が、溺愛する娘の主張や我がままをなんでも聞き入れ、娘に利用されていることに気づいていなかったのである。
田村親子に限らず、中高年男性が若い娘の気を引こうと、何でも言うことを聞いてあげた挙句、若い女性に利用されていることにまったく気づかず暴走していく現象は世間にありふれている。
田村親子から可哀そうでオメデタイ中高年男性のリアルを考察しよう。
娘や時に孫くらい年の離れた若い女性に露骨に優しくて下心満載のオジサンの末路
この世には親子ほど年の離れた娘のような女性にだけ、無意味に優しく、その女性の気を惹こう異常な執念を燃やすオジサンが後を立たない。
親子ほど離れた娘のような女性が可愛いのは致し方ないが、単に親心以上に過剰に女性に粘着するオジサンは、娘の頼みなら何でも聞いてあげ、娘が少しでも困っていると必死で守ろうとするなど、傍から見ると痛いオジサンが異常なほど若い娘に翻弄されているように見えるだろう。
親心に下心が相まって必死に娘のご機嫌を取ろうと躍起になるオジサンは、メンドクサイやつではあるものの、見方を変えると都合のいいオジサンでもある。
自分のワガママは何でも聞いてくれて、困っていたらいつも助けてくれて、いつも自分の味方になってくれるという、これほど都合のいいオジサンはいないだろう。
そうオジサンが若い娘を可愛がっているのではなく、若い娘が自分にゾッコンのキモイおじさんを上手く利用しているのだ。
しかしそのことにオジサンはまず気づかないし、誰かが善意でアドバイスしても聞く耳を持たない人種だろう。
溺愛してきた娘から、都合よく利用されていることに気づかなかった父親
人と人と間には、構造的な上下関係のほかに、実体上の上下関係が存在するものだ。
会社の上司と部下では、上司が構造上の上位の立場に位置づけられるが、部下か事実上の実権をもっていることも少なくない。表向き上司に尽くしているように見せても、業務に精通している部下なしでは仕事が立ち行かない状況では、実際上部下が権力を持ってしまうことになるだろう。
親子の関係でも同じことが言える。
未成年の子供の法律行為には保護者である親の同意が必要とされ、親が経済的に子供の衣食住を支えているのが通常だ。構造的に親が実権を持っているはずの親子関係でも、時に子供の主張や意見が最優先され、親以上に権力をもってしまう事態が散見される。
精神科医の田村修氏は、娘を溺愛するあまり、娘の言うことは何でも聞き入れて、娘のことを過度に庇護する過保護な父親だったようだ。
その結果、娘の言うことが絶対な状況が醸成され、親よりも子供が権力を持ってしまったのである。
娘の田村瑠奈からすれば、何でも言うことを聞いてくれて、全面的に味方になってくれる都合のいい父親だ。
娘を大切にする気持ちが暴走し、知らぬ間に娘に実権を握られ、娘に都合よく利用されている現実に、当の父親は気づくこともなかったのだろう。
若い子から相手にされたい気持ちが権力構造に歪をもたらす
若さは貴重な財産である。特に女性は、若いだけでチヤホヤされることも多いのが現実だ。
若い子の気を惹きたいあまり、相手のワガママや要望を必死に聞き入れ、結果相手に実権を握られ都合よく利用されてしまう男性には、中途半端に社会的な地位を手にした人が多い。
社会人としてそこそこにやってきて、年齢を重ねそこそこの地位と報酬を手に入れたものの、成功者ともいいがたいパッとしないオジサンである。
圧倒的に成功し、富と名誉を手に入れた男性は、仕事も遊びも数多くこなしてきて、1人の小娘に翻弄されるような人はほとんどいない。
平凡な社会人人生を重ね、中途半端に社会的な地位が自然に上がってきたような、冴えないオジサンは、圧倒的な成功体験もなければ、多くの女遊びも経験していないものだ。
そうしたパッとしない中年男性が、自らの限りある資産と地位で、若い娘の気を惹こうと必死になった挙句に暴走している自分に気づかないのである。
若い娘に利用される愚かなオジサンと侮辱することは簡単であるが、圧倒的な富と名声を手に入れた一部の成功者以外、誰でも陥る可能性のある身近な出来事だ。
頂き女子りりちゃんに見る、中年おじさんの絶望
2023年「頂き女子りりちゃん」と名乗り、恋愛感情を利用して中年男性から多額の金を貢がせていたとして渡邊真衣氏(25)が逮捕された。
若い女性が年の離れた中高年男性から金銭的な援助を受ける事例は、時代を問わず珍しくない。
キャバクラやクラブなどの夜のお店で、商業的型かた合法的に行われる場合もあれば、個人間の合意で行われることも古くから多くあったはずだ。
金銭的な援助の見返りとして食事やデート・性的な関係を提供するのが一般的とされ、「援助交際」として認知されていた。
金銭的な支払の対価として接待や性的サービスを提供するキャバクラや風俗は、世界的に公然と行われている一方、個人間でのやり取りで行われる「援助交際」には、いかがわしい印象が付きまとっていた。
しかしインターネットの普及に便乗して、個人間で行われる金銭を対価とする年の離れた男女間の「援助交際」は爆発的に一般化してくる。従来一部のアウトローな人間や物好きな人々によって行わていた「援助交際」、ごく普通の女子学生や若いOLと、一般的なサラリーマン男性の間で日常的に行われる行為になってきたのだ。
2014年頃より「パパ活」という言葉が浸透し始め、従来の「援助交際」や「売春」と比べ、罪悪感を感じさせないオブラートな表現で世間に瞬く間に認知され始めた。
2019年頃から、特に経営者やエリートサラリーマンといった富裕層が集う日本の港区を拠点に、パパ活で荒稼ぎする「港区女子」との言葉が世間を賑わせ、SNSや各種メディアで頻繁に取り上げられた。
これらのパパ活や援助交際と言われるものの多くは、金銭的に余裕のある中高年男性の娯楽と若い女性の小遣い稼ぎだった。
しかし、そんなパパ活界のカリスマと称されていた「頂き女子りりちゃん」の手口と実績は、世間の認識をはるかに上回るほど巧妙でえげつないものだったのだ。
お金を出してもらう男性を「おじ」と称し、「独り身が多い」「モテたことがない」「お金の使い道がない」といった特徴のおじが狙い目だとのマニュアルを自ら作成。
総額数億円もの大金を複数の中高年男性から巻き上げていたことに世間は度肝を抜いた。
頂き女子りりちゃんの「渡邊真衣」氏が自ら作成し販売していたマニュアルでは、おじと信頼関係を構築し、相手からお金を出すと言わせるまでのテクニックが克明に記載されている。
孤独で惨めな中高年男性の心理に巧妙に付け込み、相手を信頼させるまでのプロの詐欺師並みのテクニックに驚愕した人も多かった。
若い女性が目先の金欲しさに軽率に行うものだとのパパ活のイメージを、根本から覆す用意周到で計画された、理知的とも言える哀れな中高年男性に対する騙しのテクニックに、世間のオジサンは震え上がったに違いない。
年の離れた人とばかりと関わりたがる人間が陥る罠
ジェネレーションギャップという言葉があるように、年が離れた人と話が合わないのは自然なことだ。産まれてから生きてきた絶対年数や、過ごした時代が違えば、自然に擦れ違いが起きるものである。
社会人として生きていると立場の違いや年齢の違いを乗り越えて、円滑にコミュニケーションを取ることが求められるようになるだろう。比較的若くても高い地位に昇り詰める強者もいれば、年を取っても末端の地位にいるものもいる。
年齢が違っても同等の立場の人間同士だと、対等な会話が成り立つ場合もビジネスでは多い。それでも少し仕事を離れると年齢の近い者同士でつるみたがるものだ。
しかし時折、同世代の人間よりも年の離れた人間とばかり関わろうとするものがいる。向上心の高い人が敢えて目上の人に気に入られようと頑張っているのならまだ分かりやすい。
もっとも危険なのは、対等じゃないからこそ利用できる相手からの譲歩を利用することでしか人間関係を築けない人だ。
同世代の異性よりも、お小遣いをくれる年の離れた男性としか関係を持とうとしないパパ活女子はその典型である。何でもワガママを聞いてくれて、優しく接してくれるオジサンとばかり関係を持つ若い女性も一定数存在する。
年の離れた後輩や部下ばかりに横柄な態度で接し、言いたいことを言いたい放題言う社会人もそうである。年下の後輩とばかり飲みに行きたがるオジサンは、相手が気を遣ってくれていることを、自分が慕われていると勘違いしているのかもしれない。
必然的に自分に気を遣ってくれる対等じゃない者とばかり関わりたがることは、ある意味で身勝手でワンマン気質な面があることを心に留めておくべきだ。
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