初心者必見!財産3分法の基本と賢い投資★お金以外の資本に賢く投資!成功を掴むための戦略とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る


2024年3月4日、日経平均株価が初めて4万円台に到達し、日本の経済史に新たなページが刻まれました。日本銀行は3月19日にマイナス金利を解除し、17年ぶりに政策金利を引き上げましたが、株価は依然として上昇の勢いを保っています。また、新たに導入されたNISA(少額投資非課税制度)も後押しし、若者からリタイア世代まで、投資家の層は急速に広がりつつあります。

しかし、投資の世界を長く見つめてきたベテランたちは、この状況を手放しで喜んでいるわけではありません。1987年、ニューヨークで株価が突然23%も下落した「ブラックマンデー」の記憶が、今も彼らの心に深く刻まれているのです。1989年の年末に記録された日経平均の最高値が再び更新されるまでに、30年以上もの時間がかかるとは、当時の誰もが予測できなかったことでしょう。

相場がどのように動くのかは誰にも分かりませんが、一つだけ確かなのは、いつの日か投資家たちに試練が訪れるということです。証券関係者はそのことを経験から感じ取っていますが、上昇相場しか知らない投資家には、この感覚を理解するのは難しいかもしれません。果たして、試練が訪れたとき、あなたはそれに耐えられるでしょうか。

「伝説のファンドマネジャー」として知られる清原達郎氏は、個人投資家に向けてこう語ります。「相場が下がって損失が出たとき、決してパニックにならないこと。最も避けるべき行動は、株価が下がっているときに売ることです。」

この言葉は、百戦錬磨の投資家には耳慣れたものかもしれません。しかし、投資初心者や中級者にとっては、まさに今、株価が歴史的な上昇局面にあるこの時期こそ、お金や投資についてじっくりと考え、学ぶべきタイミングなのです。特に、できる限り本質に迫る姿勢が求められます。

今、私たちが考え、学ぶことで、大切な資金を守り、ピンチをチャンスに変える力を養うことができるでしょう。お金とは何か、投資とは何か――。彼らの考え方から、その本質を掴み取ってください。経済や社会問題についても、第一線の専門家たちがわかりやすく解説してくれます。

今、株価4万円時代の入り口に立つ私たちにとって、この講義は将来を豊かにするための貴重な機会となるはずです。



コンテンツ

ジム・ロジャーズが語る投資哲学:成功するための金言と日本株の未来


ウォーレン・バフェット氏やジョージ・ソロス氏と肩を並べる世界的な投資家の一人に、ジム・ロジャーズ氏がいます。今回は、ロジャーズ氏からお金や投資についての貴重な教えをじっくり伺うことができました。果たして、あなたは「投資の鉄人」になれるのでしょうか。

ロジャーズ氏によると、お金は知識とスキルを持っている人のもとに集まるものです。エンターテインメントもその一つで、たとえば歌手のテイラー・スウィフトや著名な経済コメンテーターのように、人々が欲しがるスキルを持っていると、お金は自然に集まってくるのです。過去を振り返ると、50年前の石油危機では、中東が大量の原油を抱えていたことで莫大な富を手に入れました。重要なのは、人々が必要とするもの、あるいは欲しいと感じるものを手に入れることです。

ただし、注意すべきこともあります。新しい技術や製品が登場すると、人々は興奮し、大金を投じがちです。例えば、ラジオ、テレビ、コンピューターが世に出たときもそうでしたが、永遠に続くと錯覚してしまうことが多いのです。歴史は繰り返され、かつて熱狂した鉄道株も、今では当時の価値を大きく失っています。今注目されているAI(人工知能)も、将来には価値が変わる可能性が高いでしょう。来年AI株を買ったとしても、すでにその価値が薄れているかもしれない、とロジャーズ氏は警告します。

では、日本の現在と将来について、彼はどう見ているのでしょうか。この40年間、日本は厳しい時代を過ごしましたが、現在の日本の株式市場は多くの理由で魅力的な投資先となっています。しかし、こうした状況が長く続くとは限りません。人口が減少し、借金が増え続ける日本にとって、劇的な変化がなければ50年後には全く違う姿になっている可能性が高いのです。ロジャーズ氏は、かつてアジアで最も豊かだったミャンマーが、国を閉ざしたことで最も貧しい国へと転落した歴史を例に挙げ、どの国にも同じリスクがあると警告します。外部に対して閉鎖的な国は、世界の変化についていけず、衰退の道を歩むことになるでしょう。

さらに、日本の円安が続けば、外国人にとっては魅力的な投資先となる一方で、日本経済は深刻な問題を抱え続け、円の価値はさらに下がる可能性があります。そんな中、日本に住むことが幸せかどうかは疑問が残るでしょう。ロジャーズ氏は、日本人に対しても世界の変化に対応するための行動を求めています。

また、日本株に投資する際も注意が必要です。ロジャーズ氏は、誰であれ、自分がよく知っている対象にのみ投資することを強く勧めています。ホットな情報やネットの噂に流されず、自分の知識に基づいて慎重に判断することが、成功への道です。もし十分に企業について知らないのなら、インデックス投資にするか、銀行に預金して投資の機会を待つことが賢明です。重要なのは、辛抱強さです。辛抱強く待てる者こそ、最終的に成功を手にすることができるでしょう。

投資家としての哲学について、ロジャーズ氏は「ルールは一つだけ。それは損をしないこと」と語ります。損を出すかどうかは、投資先の選び方次第で決まるというのです。成功を目指すならば、他人の話に頼らず、自分の知識に基づいて行動すべきです。世界が常に変化している中で、何かが起きたときに素早く対応できるよう、多くの経験を積み、知識を深めておくことが大切です。

そして、最後にお金との付き合い方について、ロジャーズ氏は「お金は貯めて投資するものだ」と強調します。多くの人はお金を手にするとすぐに使おうと考えがちですが、「貯蓄や投資が先、消費は後」という心構えを持つことが、将来的な豊かさを築くために重要なのです。世界情勢がどのように変化しても、自分がよく知っているものに投資し、しっかりとした貯蓄があれば、必ずや乗り切ることができるでしょう。

現代においては、繁栄している国が多く、投資の機会を見つけるのが難しい状況ですが、ロジャーズ氏の投資スタイルは、安い対象の中から微妙な変化を見つけ出し、それに投資するというものです。たとえば、現在、中国経済はコロナ禍と不動産バブルの崩壊によって大きな問題を抱えていますが、ロジャーズ氏はその中でも投資できる企業を探しているのです。彼はまだその対象を見つけていませんが、必ずや素晴らしい投資先を発見すると確信しています。



初心者必見!投資を始める前に知っておきたい『財産3分法』の基本


「お金や投資に関心を持ち始めた人への貴重なアドバイス」と題して、今注目されている「お金」との付き合い方について、投資の基本からお話ししたいと思います。近年、日経平均株価が史上最高値を更新し、NISA制度が話題になっています。このような状況下で、「お金」や「投資」に対する興味を抱く人が増えているのではないでしょうか。

まず、最初に行っていただきたいのは、給与明細を手に取り、その内容を確認することです。額面金額が約束通りか、税金や社会保険料がどの程度引かれているのか、そして最終的に手取りがいくらになっているのかをチェックしてみましょう。給与明細は、お金の「入り口」を示す重要な資料です。職場から支払われたお金のうち、実際に手元に残るのがいくらかを把握することで、自分のお金が労働の対価であるという現実を理解することができます。

では、その大切なお金をどう使っていくべきでしょうか。ここで紹介したいのが「財産3分法」という基本原則です。この方法は、手取り収入を「財布」「投資」「預金」の3つに分けて管理するシンプルな手法です。

「財布」は、日常生活に必要な金額を管理するためのものです。衣食住や医療費、美容代などに使うお金を数日から1週間分程度持っておくと安心でしょう。次に、「投資」について考えてみましょう。投資には「なくなっても生活に困らないお金」を使うべきです。月の手取りが20万円なら、1万円程度の投資が適切かもしれません。しかし、最初から無理をせず、数カ月間の生活費の出入りを観察し、投資に回せる金額を決定することが重要です。

最後に「預金」についてです。預金は流動性が高く、いつでも引き出せるお金としての役割を果たします。基本的には家賃や光熱費などの固定費の引き落としに使われますが、「財布」の補充や貯蓄の目的で活用します。流動性が高いことが預金の価値であり、そのため、金利の高い定期預金よりも普通預金を選ぶ方が賢明でしょう。

特に投資に関心を持つ方に向けて、なぜ投資が必要なのかを説明します。お金を増やすためには「収入を増やす」か「支出を減らす」の2つの方法がありますが、現実的な選択肢は「収入を増やす」ことです。投資とは、投じたお金以上のリターンを目指す行為です。リスクが伴うことは否定できませんが、リスクを避けていてはお金は増えません。日本では、かつて「投資=ギャンブル」という考え方が一般的でしたが、投資とギャンブルはまったく異なるものです。投資は自分でコントロールできる要素があり、リスクをうまく管理することで、確実に収益を得ることが可能です。

投資を始める際に心に留めておきたいのは、「ポートフォリオ」を作ることです。投資のリスクを分散させるために、異なる資産に投資することで、安定した収益を得ることが可能です。また、投資先として成長する分野に目を向けることも大切です。短期的な利益を追い求めるのではなく、長期的な視野で投資を続けることが成功への鍵です。

投資には「お金への投資」と「自分への投資」の2つがあります。私が最もお勧めしたいのは、自分自身への投資です。自身のスキルや知識を向上させることで、将来的に収入を増やすことができます。どちらの投資も最終的な目標は、人生をより豊かにすることです。その目標に向かって、計画的な投資を続けていきましょう。



厚切りジェイソンが語る「支出見直し」で投資効果を最大化する方法とは?


IT企業の役員でありタレントでもある厚切りジェイソン氏は、投資やお金の管理に関する本で数々のベストセラーを生み出しています。

まずジェイソン氏は、投資を始める前に支出を見直すことの重要性を強調します。新しいNISAが始まり、多くの人が個別株や投資信託に興味を持つようになりましたが、彼は「その前に支出を減らしていないの?」と問いかけます。支出を削減することで、投資に回せる金額が増え、さらに投資による収益を上回る費用対効果が得られると指摘します。例えば、携帯電話のプランを見直すだけで、毎月大幅に通信費を節約できるといいます。固定費を一度減らせば、その効果は長期間にわたり続きます。

ジェイソン氏の投資の基本戦略は、「支出を抑える」「残ったお金を投資に回す」「そして待つ」というシンプルなものです。彼が推奨するのは「長期・積み立て・分散」の三原則であり、手数料の低いインデックスファンドに定期的に投資を行うことを強く勧めています。彼によれば、これが最も再現性が高く、安定したリターンを期待できる方法だといいます。

ジェイソン氏が特に注目しているのは米国株のインデックスファンドです。彼が投資しているのは、「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」という、全米の株式市場を包括するインデックスファンドです。これにより、大型株から小型株まで約4000銘柄に分散投資することが可能です。彼は米国のスタートアップ文化にも精通しており、その成長力を信頼してこのファンドを選んでいます。

米国株だけに投資するのでは分散投資にならないのではないか、と思うかもしれませんが、ジェイソン氏はこれをグローバル投資と同等だと考えています。なぜなら、米国企業は世界中でビジネスを展開しており、実質的に世界市場への投資と同じだからです。また、米国市場は歴史的に何度も暴落を経験しながらも、最終的には復活し、成長を続けてきたという事実も彼の信頼を支えています。

さらに、ジェイソン氏は投資にかかるコストにも注目する必要があると述べています。インデックスファンドの中でも、手数料の低いものを選ぶことが重要であり、同じ指数に連動するファンドなら、コストが低いものを選ぶべきだと強調します。また、長期的な視野を持ち、短期的な市場の変動に惑わされず、冷静に保有を続けることが大切だと述べています。

最後に、ジェイソン氏は「これはあくまで僕のやり方で、すべての人に当てはまるわけではない」と述べ、投資は各自がしっかりと考え、自分に合った方法を見つけることが重要だと強調します。また、投資を行う際は健康であることが大前提であり、健康管理も忘れないようにとアドバイスしています。



日本国債とは?金利上昇のメカニズムと投資のポイントを解説


「国の借金が増えて大変だ」という話題がよく出ますが、その背景には国債が大きな役割を果たしています。国債とは、国家が資金を調達するために発行する債券であり、実はお金や投資を理解する上で欠かせない存在です。

まず、国債とは何か、そしてなぜ国債の金利が注目されるのかについて説明します。国債は国が資金を調達するために発行する債券であり、これは株式と異なり、元本の返済が約束されています。また、債券は市場で転売が可能で、その時々の値段がつくのが特徴です。投資のリスクが高いほどリターンも高くなるのが自然ですが、国債は非常に低リスクな資産とされています。すべての資産の収益は、国債の金利を基準に評価されるため、国債の金利は投資家にとって非常に重要な指標となるのです。

次に、国債価格が下がると金利が上がる理由について解説します。この関係は一見すると複雑に思えるかもしれませんが、実は自然な現象です。例えば、不動産を安く購入すると、家賃収入のリターンが高くなるのと同じように、債券も安く購入すればリターンが増えます。つまり、債券の価格と金利は同時に決まるものであり、価格が下がれば金利が上がるという逆の関係が成立するのです。

さらに、国債の期間が長いほど金利が高くなる理由についても触れておきます。一般的に、日本国債の金利は満期が長くなるほど高くなる傾向があります。これは、固定契約が長期間にわたるとリスクが高くなるため、その分リターンが求められるからです。例えば、10年ものの国債は長期固定契約であり、市場環境の変化に大きく影響を受けるため、リスクが高くなります。また、長期金利は短期金利の将来予想に基づいて決まるため、将来の短期金利が上がると見込まれると、長期金利も上昇するのです。

最後に、日銀が実施してきたイールドカーブ・コントロール(YCC)についても触れておきましょう。日本銀行は2016年以降、長期金利をゼロ近辺に誘導する政策を行ってきましたが、インフレの高まりなどから2024年3月にYCCを廃止し、短期金利を引き上げました。今後の金利動向にも注目が集まります。



投資対象を超えて成功を掴む!お金以外の資本に賢く投資する方法


「投資」という言葉を聞くと、ついお金に焦点を当てがちですが、実際には時間や人材にも同様に投資することが重要です。現代では、投資の対象(Investment)とそのリターン(Return)は多様化しており、自分にとって何が最適なのかを見極めることが求められます。

投資を考える際には、「対立構造」で考えることがポイントです。例えば、「お金に投資する」か「人的資本に投資する」かを比較した場合、スキルや知識を身につけることで収入が増える可能性が高いかもしれません。また、「お金に投資する」か「時間に投資する」かを考えると、1時間で大きな収益を上げられるなら、その時間の使い方が極めて重要になるでしょう。

このように、複数の選択肢を比較することで、何が最も効果的かを判断しやすくなり、優先順位も明確になります。投資は金融商品に限定されるものではなく、時間や人脈にもバランスよく配分することで、人生を豊かにすることができます。

例えば、私がYouTubeで「考えるエンジンちゃんねる」に時間を投資した結果、直接的な金銭的対価は小さかったものの、コミュニティーが形成され、そこから講座や書籍の販売といった新たな価値が生まれました。

金融投資を始める際には、十分に理解しているかを確認しつつ、実際に行動することが大切です。株式や投資信託について学びたいなら、証券口座を開設し、小額でも投資を始めてみることが必要です。流行や他人の意見に流されず、自分で考え、理解することが重要です。例えば、新NISAが話題になっていますが、「みんながやっているから」という理由で始めるのではなく、その仕組みを理解した上で判断するべきです。

また、理解する力と同様に、事実から未来を予測する力も重要です。例えば、ある国の首相の発言が特定の産業に影響を与えるかもしれないといった示唆を読み取る力が求められます。

生成AIが進化する中で、人間が勝るのは「考える力」です。この力を鍛え、金融・人・社会の3つの資本を成長させるために、時間を有効に投資していきましょう。



資産運用初心者向け:リスクを最小限にするための投資術と基礎知識


投資を始めたばかりの初心者や中級者にとって、適切な知識と理解を持つことは非常に重要です。特に、新社会人として初めての給与やボーナスを手にし、株価が好調であると「今投資をしなければ損をする」と感じるかもしれませんが、投資には冷静な判断が求められます。まずは、投資の目的を明確にすることが不可欠です。例えば、住宅取得資金や教育資金、老後の備えといったライフステージごとの目標を持ち、その計画に基づいて行動することが大切です。

江戸川大学社会学部教授の杉山敏啓氏は、資金使途が明確になることで、貯蓄や個別株、投資信託など、どの手段で資産を増やせばよいかが理解できると語っています。たとえ税制優遇があるとしても、NISAは目先の資金を貯めるには不向きであり、iDeCoは老後資産を増やすための制度であるため、これらの意味と仕組みを理解し、適切に活用することが必要です。

また、勤労所得と金融所得のバランスも重要です。勤労所得がなければ金融所得は生まれませんし、投資に夢中になりすぎると本末転倒になります。杉山氏は、ファイナンス理論においては、リスク資産だけで資産を形成するのではなく、安全資産も一定の割合で持っておくことが合理的であると指摘しています。そのため、安全資産やリスク資産、個別株、投資信託の意味や特徴をしっかりと理解しておくことが大切です。

また、投資においては「ノー・フリーランチ」という言葉も覚えておくべきです。これは「うまい話はない」という意味であり、リスクなしで確実に利益を得ることはできません。専門用語が理解できていないと、投資信託の購入で手数料を損する可能性もあります。基本的な用語を押さえておくことで、失敗を回避しやすくなります。

最近では、株式分割を行う企業が増え、個別株の購入がしやすくなっています。少額から投資できる単元未満株やるいとうを利用することで、投資のハードルが下がっています。しかし、特にアベノミクス以降に投資を始めた人々は、良好な相場しか知らないことが多く、今後の市場動向に対しては慎重に進める必要があります。

ライフスタイル→マネープラン研究所代表の石原敬子氏は、見切り発車で投資を始めるケースが多いことを指摘しています。NISAの活用が進んでいるとはいえ、全てを放置するわけにはいきません。投資にはさまざまなリスクが伴うため、基本的な用語の理解は不可欠です。

例えば、上場株式を取引する場合、その意味を理解していれば、上場廃止や未公開株のリスク、IPOの魅力についても理解が深まります。投資を始めると、米国雇用統計や企業業績に関する専門用語を目にすることが増えますが、これらを理解できないと他人の意見に流され、自分で考えることを放棄してしまう危険性があります。

ビギナーはまず、世界の株式に分散投資する投資信託を、余裕資金の範囲で購入してみることをお勧めします。月次レポートをチェックしながら学ぶことで、米国株が成長していると分かれば、個別株の検討も可能になり、自分に合った投資手法を見つけられるでしょう。



リーマンショックの経験が教えるお金の哲学:田内学氏が語る未来への投資


田内学氏は、著書『きみのお金は誰のため』の大ヒットで注目を集めています。

田内氏が語るお金に対する考え方の大きな転機となったのは、ゴールドマン・サックス証券でリーマンショックを経験したことでした。その際、多くの社員が解雇されましたが、それは個々の能力に関係なく、売上の少ない部署やグループが一括して切られていくというものでした。売れないということは、世の中にとって必要とされていないということを意味し、役立つからこそ会社も社員もお金を得られるのだと彼は強く感じたそうです。

田内氏は、会社という枠組みを通じて私たちは社会に役立つものを提供すべきであり、会社が存在するのは、私たちが社会にとって必要な価値を生み出しているからだと考えるようになりました。日本では、社員が十分な価値を提供できなくても解雇されにくい文化がありますが、その危機感が薄れると、会社全体が沈んでしまう可能性があると警鐘を鳴らします。雇用を守るために企業が支えられる一方で、社会に貢献できない企業が存続する結果、国全体が停滞するリスクを抱えているのです。

さらに、「お金があればすべてが解決できる」という考え方は非常に危険だと彼は警告します。問題が解決するのは、お金を受け取った人がその解決策を提供するからであり、重要なのはまず問題を解決しようとする人が存在することだと彼は強調します。グーグルの検索エンジン開発の例を挙げ、問題解決への意欲が先にあり、それを支えるための投資が生まれることが、社会の発展につながると説明しました。

しかし、日本では新しいことに対する資金ニーズが低く、昨年の東京証券取引所で新規発行された株はわずか1兆円に対し、企業の株式買い戻しは10兆円近くにも上りました。これでは「貯蓄から投資へ」という流れができても、新しい挑戦にお金が回らないと田内氏は嘆きます。

彼は、未来を見据えて私たちが今行うべきことは、少子化の進行に対処し、少ない労働力でも効率的に回る社会を構築することだと訴えます。少子化が進むと、将来の労働人口が減少し、必要なものやサービスが不足し、物価が上がる可能性が高まります。そのため、今すべきことは、若者を育成し、効率的な社会を作るための取り組みです。

また、若い人たちには、限られた「いい学校」「いい会社」を目指す椅子取りゲームを続けるだけでなく、新しい価値を創造する努力をしてほしいと田内氏は訴えます。お金を増やす方法は、働いたお金を投資に回すだけでなく、自分のやりたいことに投資してもらうことも考えるべきだといいます。重要なのは、何をすれば人に喜んでもらえるかを考え、それを実行することです。

最後に、田内氏は、社会を支えるのは私たち一人ひとりであり、社会の問題は他人事ではなく自分たちの問題であると述べました。未来に興味がある人には、ぜひ『きみのお金は誰のため』を読んでみてほしいです。



清水大吾が語る「新しい資本主義」時代の投資戦略と成功の秘訣


政府が掲げる「新しい資本主義」が進展し、新NISA(少額投資非課税制度)もスタートしました。これに伴い、資産運用への関心が高まり、これまで投資に無関心だった人々も目を向けざるを得ない状況が生まれています。しかし、投資経験が浅い人々は、どのような心構えでこの新しい時代に臨めば良いのでしょうか。

米国の投資銀行などでの勤務経験を持ち、資本主義のあり方について積極的に発信している清水大吾氏が著書を執筆したきっかけは、日本の証券会社やゴールドマン・サックス証券に勤める中で感じた「資本主義」や「資本市場」に対する違和感からでした。「なぜ利益を追求し続けなければならないのか」と疑問に思いながらも、それが許されない環境に身を置いていた清水氏は、資本主義が行き過ぎた結果として、環境問題や格差問題が生じたと指摘します。その象徴的な出来事がリーマンショックであり、今の資本主義の枠内で一定の影響力を持ちながらも、正論を伝えることでしか社会を変えられないと考えたのです。これまで議論されてきたことや、自身が実践してきたことを一冊にまとめ、多くの人々に伝えたいという思いが、この著書の執筆動機となったのです。

資本主義を活用するためには、投資が不可欠です。投資とは、株式会社が社会のためになる活動に資本を投下するシステムであり、コロナ禍で迅速にワクチンが開発された背景にも、潤沢な資本が存在していたことが大きな要因です。しかし、日本においては、米国型の資本主義が必ずしも最適とは言えません。これまで日本は、資本主義の仕組みが十分に回っておらず、資本主義を本格的に使いこなす段階に達していなかったのです。今こそ、企業や投資家が投資の本質を理解し、資本主義を適切に活用していく時期に来ています。

投資をする際に最も重要なのは、投機と投資の違いを理解することです。投機はギャンブルのようなもので、勝者と敗者が存在するゼロサムゲームですが、投資は世の中のためになる事業に資本を投下し、成功すれば利益を得ることができる、いわばウィンウィンの関係です。投資する企業の選定においても、社会に貢献する活動を行っている企業に注目すべきです。

また、投資にはビジネスの「時間軸」を考慮することも重要です。短期間で結果が出るビジネスもあれば、インフラ開発のように長期的な視点で見なければならないものもあります。利益が出るまでの期間を理解し、適切なタイミングで投資することが求められます。

清水氏は、特に日本企業への投資を勧めています。現在、新NISAの状況を見ても、米国企業への投資が圧倒的に多いですが、日本企業も資本的に応援する必要があると考えています。これまでの実績から見れば、米国企業への投資は合理的かもしれませんが、このままでは日本は弱体化してしまう恐れがあります。日本企業が本来持つ優れた経営力や現場力を活かし、適切なマネジメントが行われれば、日本の株価がさらに上昇する可能性も十分にあるのです。

最後に、投資信託についても、清水氏はアクティブ型の商品に目を向けることを勧めています。アクティブ型投資信託は、企業経営者にとって大きな刺激となり、結果として市場全体が上昇する流れを生み出す可能性があるからです。これからの日本の成長を見据えた投資が、私たち一人ひとりの手で未来を切り開く鍵となるでしょう。



日経平均株価、34年ぶりの史上最高値更新!今後の日本株市場の見通しとは?


日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、その背景と今後の見通しが注目されています。年初から上昇を続け、2024年2月には1989年12月末以来の最高値である3万8915円を突破し、3月にはついに4万円を超える大台に到達しました。

この急激な株価上昇の要因には、デフレからの脱却や引き続き緩和的な金融環境が株価に好影響を与えたことが挙げられます。特に2024年3月19日に発表されたマイナス金利政策の解除が、市場に安心感をもたらしました。さらに、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年内の利下げが先送りされる懸念が和らぎ、日経平均株価は再び史上最高値を更新しました。

しかし、市場関係者の間では、今回の株高は「バブル」ではないとの見解が広がっています。バブル期の東証1部(当時)の株価収益率(PER)が60倍前後だったのに対し、現在の日経平均の予想PERは17倍程度であり、過去10年の平均範囲内です。また、今の株価は好調な企業業績に裏付けられたものであり、バブル期のような投機的な上昇とは異なると指摘されています。

今回の日本株の上昇を主導したのは、海外投資家です。2023年には海外投資家が6.3兆円、企業の自己株買いを主体とする事業法人が4.9兆円と、大きな買い越しがありました。年初からも個人投資家の資金流入や企業の積極的な自己株買いが続き、株価を押し上げる要因となっています。

ただし、年初からの急激な上昇により、短期的には株価の過熱感があることも事実です。特に、昨年の上昇に乗り遅れた海外投資家が、年初から楽観的なシナリオを基に日本株を買い進めているとの指摘もあります。今後、米国経済の減速などで前提が崩れれば、短期的な調整が起こり得ると予測されています。

さらに、日本株の上昇は大型銘柄が主導しており、中小型銘柄では株価が遅れを取っている銘柄も多いです。日経平均採用銘柄の中には、今年に入ってから大きく上昇したものもありますが、東証に上場している企業全体の騰落率を見ると、必ずしもすべての銘柄が上昇しているわけではありません。

今後の日本株市場を左右するのは、企業業績の動向です。『会社四季報』2024年春号の予想では、来期の全産業の経常増益率は7.5%と見込まれており、増益基調が続くと期待されています。これにより、2025年には日経平均株価が4万円台を安定的に維持できる水準となる可能性があります。

ただし、短期的な調整局面には注意が必要です。特に、2024年11月の米大統領選挙が近づくにつれて、市場の不透明感が高まる可能性があります。しかし、選挙が終われば、不透明感が解消され、再び株式市場が上昇局面に入ると予想されています。

中長期的には、割高感がない好業績銘柄を選別し、慎重に投資することが求められます。デフレ脱却や東証の改革など、日本株を支える要因は多く、これが評価されれば、大型株から中小型株への物色が広がる可能性もあるでしょう。



老後資金の不安を解消!今から始める資産運用の重要性とは


「人生100年時代」が現実味を帯びる中、老後資金の枯渇への不安が多くの人々に広がっています。年金制度や雇用の不安に加え、インフレの影響も相まって、資産運用に関心を持つ人が増えています。特に、新NISA(少額投資非課税制度)の開始や日経平均株価の上昇が、これから資産運用を始めようとする人々を後押ししていることでしょう。

しかし、現役世代が考えている目標の資産額が、将来には十分ではなくなる可能性が高いことを忘れてはなりません。2023年の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、20代から50代までの世代で最も多く目標とされる金融資産額は「1000万~1500万円未満」でしたが、60代になると「2000万~3000万円未満」や「3000万~5000万円未満」が増えています。このデータからもわかるように、多くの人々が退職間近になって初めて、資産が足りないことに気づくのです。

資産運用は早めに始めることが理想的です。しかし、預貯金だけでは資産はほとんど増えません。例えば、日本銀行がマイナス金利政策を解除し、三菱UFJ銀行が1年物定期預金の金利を引き上げたものの、その利率は依然として0.025%と低いです。昨年の消費者物価上昇率が3.1%であったことを考えると、定期預金だけでは物価上昇に追いつけないのです。

デフレ時代には、現金の価値が相対的に上がるため、低利率でも預金をしておくことは意味がありました。しかし、インフレが続くと、現金の価値は目減りします。例えば、年2%のインフレが10年間続けば、100円の品物が122円に値上がりし、貨幣価値は2割減ることになります。このため、老後に備えるためには、株式や債券、投資信託といったリスク資産での運用が必要不可欠なのです。

資産運用においてリスクを取る目安として、「100-年齢」%の公式があります。これは、例えば25歳なら資産の75%をリスク資産に充て、65歳なら35%をリスク資産に充てるという考え方です。年齢とともにリスク資産の割合を減らしていくという考え方は、多くの専門家に支持されています。

独立系運用会社・コモンズ投信の伊井哲朗社長も、20~40代は時間が最大の味方であり、そのためには納得して続けられる商品を選ぶことが不可欠だと指摘しています。コモンズ投信が運用する「コモンズ30ファンド」は、「30年後も活躍する企業」をキーワードに投資対象を絞り、企業経営者との対話を続けています。長期投資を実践するには、信頼できる商品を選ぶことが重要です。

50代になると、資産に余裕がある人もいれば、そうでない人もいます。もし70歳まで働くと考えるならば、まだリスクを取ることは可能です。ニッセイ基礎研究所の熊紫云研究員は、老後資金の資産形成はまだ間に合うと話しています。過去のデータを用いた試算では、運用期間が長いほど元本割れリスクを抑えられることが確認されています。新NISAで米国株などの指数連動商品に投資することも一考に値します。

ただし、プロからの警告もあります。熊氏はデイトレードやFX、暗号資産、美術品などに手を出すべきではないと警告しています。これらの取引はリスクが高く、資産形成には向いていないとされます。業績成長が期待できる株式であれば、中長期的には企業価値の増大が株価上昇につながり、利益を得ることも可能ですが、短期的な取引ではその恩恵を受けられないのです。

結論として、長期的な視点で信頼できる商品を選び、リスクを取ることが老後資金の形成にとって重要です。「人生100年時代」に備え、今からでも資産運用を始めることが賢明でしょう。



2024年新NISAの全貌:投資枠と非課税の仕組みを徹底分析


2024年からスタートした新しいNISA(少額投資非課税制度)は、多くの人がその詳細を把握していないかもしれません。

まず、新NISAは金融商品の名前ではなく、個人投資家の資産形成を支援するための国の税制優遇制度です。通常、特定口座や一般口座で運用利益や配当金を得ると、約20%の税金がかかります。しかし、新NISA口座を利用すれば、この税金がかからず、運用で得た利益をすべて手元に残すことができるのです。

新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの枠があります。成長投資枠は、上場株式や公募投資信託、ETF(上場投資信託)などにスポット購入や積み立て投資ができる枠で、年間240万円まで非課税で投資が可能です。つみたて投資枠は、長期・積み立て・分散投資に適した条件を満たす公募投資信託やETFでの積み立て専用の枠で、年間120万円まで非課税です。これらを組み合わせることで、年間最大360万円までの非課税投資が可能です。また、全体の非課税保有限度額は1,800万円となっており、成長投資枠の限度額は1,200万円です。

注意点として、どの金融機関でNISA口座を開設するかによって、投資できる商品の種類が異なります。例えば、インターネット証券では米国株や中国株に投資できる場合もありますが、銀行で開設したNISA口座では、上場株式やREIT(不動産投資信託)には投資できません。そのため、投資する商品に応じて、どの金融機関で口座を開設するかを慎重に選ぶ必要があります。

新NISAでは、投資商品の売却後に非課税枠が復活し、再利用できるのが特徴です。例えば、120万円で購入した投資信託が値上がりし、100万円の利益を得た場合、その利益は非課税で手に入れることができます。売却後は再び120万円まで新たに投資が可能ですが、非課税枠の復活は翌年以降となるため、短期売買には向いていません。

新NISAの口座開設は恒久的に可能で、非課税保有期間も無期限です。しかし、NISA口座を開設できる金融機関は1つだけで、年1回変更が可能です。変更手続きは前年度の10月1日から変更する年度の9月30日までに行う必要があり、同年度内に買い付けを行うと変更ができなくなる点に注意が必要です。

さらに、相続時にはNISA口座の資産は課税口座に移管され、相続税評価額として計算されます。NISA口座を相続することや、相続人のNISA口座に移管することはできません。また、亡くなった後に受け取る配当金や分配金は非課税にはならず、所得税や地方税がかかります。

NISA口座で配当金を非課税で受け取るには、「株式数比例配分方式」を選択することが必須です。他の方法を選択すると、配当金に課税されてしまいます。特に、成長投資枠で保有する米国株やETFの配当金には、米国内で10%の税金がかかるため、その点も留意が必要です。

新NISAを活用する際には、しっかりとした資金計画を立て、長期的な視点での投資を心がけることが大切です。市場の動きに左右されず、冷静に対応できるよう準備を整えておくことが成功の鍵となるでしょう。



清原達郎氏の投資哲学:TOPIX ETFとオールカントリー型の選び方


2005年にタワー投資顧問の運用部長として名を馳せ、長者番付の1位に輝いた伝説のファンドマネージャー、清原達郎氏が、2023年に「タワーK1ファンド」の運用を終了し、初の著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』を出版しました。この著書には、清原氏の豊富な投資経験と、個人投資家が現代の相場で成功するための知識が余すところなく書かれています。清原氏は、文面での取材を通じて今後の相場展望を語ってくれました。

日本株への投資について、清原氏は、特に大型株に対してはTOPIXのETF(東証株価指数連動型上場投資信託)を推奨しています。大型株は個別にリサーチしても限界があり、ETFを活用するのが効率的です。TOPIXと日経225のインデックスファンドには大差はないとしつつも、日経225は半導体製造装置株など特定のセクターに偏っているため、TOPIXの方がバランスが取れているとしています。円安の進行を考慮し、将来的な円高リスクに備えて、TOPIXの方が影響が少ない可能性があるとの見解です。

また、最近注目されている全世界の株式に投資する「オールカントリー型」についても触れ、運用手数料が安く、金融教育が進んでいる日本に適した商品だと評価しています。しかし、オールカントリー型はS&P500と似たパフォーマンスになる可能性が高く、小規模国の株式取引の手数料が高い点も考慮する必要があります。清原氏は、円高リスクを避けるためにTOPIXを推奨しつつ、今後のドル金利の動向にも言及しています。

個別銘柄の選定に関しては、紙版とオンライン版の『会社四季報』を使い分けています。オンライン版では個別銘柄の詳細なリサーチを行い、紙版では特定のセクターや銘柄群を広くチェックするのが効率的だと説明しています。銘柄の選定プロセスとしては、まず自作の計算式でネットキャッシュ比率やPER(株価収益率)でスクリーニングを行い、その後、選定した銘柄を詳しく調べるとしています。

著書では、日本経済の厳しい未来予測とともに、日本株の将来についても触れています。企業経営者の慎重な姿勢が市場に良い影響を与える一方で、急騰した株式にはリスクも伴うと警告しています。特に半導体製造装置株や生成AIなどのトレンドに対しては慎重な見解を示し、割高な株やセクターには警戒が必要だと述べています。株式市場全体としてはまだバブルとは言えないとしつつも、急激な株価上昇には注意が必要です。

個人投資家に対しては、相場が下落してもパニックにならず、冷静に対処することが重要だと強調しています。特に、ロスカットのように株価が下がったからといって慌てて売ることは避けるべきだとアドバイスしています。買った銘柄の株価が下がった場合、追加で購入するか、そのまま保有するかの選択をすることが基本だとしています。



株式市場の注目キーワードとその影響:資本コストとエクイティスプレッドの重要性


企業経営や経営環境の最新キーワードを理解することは、現代のビジネスシーンにおいて非常に重要です。グローバル競争の激化やデジタル化の進展、そして少子高齢化など、多くの課題が企業経営に影響を与えています。では、株式市場や企業経営の現場で注目されているキーワードとはどのようなものなのでしょうか。ここでは、ニッセイ基礎研究所の森下千鶴氏と、人材開発のセルム社長である加島禎二氏の見解を基に、これらのキーワードを解説します。

まず、株式市場や投資関連のキーワードとして注目されているのは、「株主資本コスト」や「エクイティスプレッド」、「投資家と企業の対話ガイドライン」、さらには「コンプライ・オア・エクスプレイン」などです。東京証券取引所が2023年3月に発表した報告書によると、多くの上場企業が資本収益性に関して課題を抱えており、持続的な成長と企業価値の向上を目指すには、資本コストや株価に対する意識改革が必要です。資本コストとは、事業資金調達に伴うコストであり、株主資本コストは投資家が期待するリターンとも言えます。エクイティスプレッドは、資本収益性と株主資本コストの差を示す指標で、投資家の期待を超える稼ぐ力を表します。また、コーポレートガバナンス・コードに基づく「投資家と企業の対話ガイドライン」では、企業と投資家の建設的な対話が求められています。これにより、企業は自らのガイドラインに対して適切な説明を行う必要があります。

一方、企業経営の領域では、最近のキーワードとして「人的資本経営」や「戦略人事」、「CHRO(最高人事責任者)」などが挙げられます。加島氏は、人的資本経営が企業の持続的成長にとって重要であり、人材を単なる「資源」ではなく「資本」として捉えることが大切だと述べています。これは、企業が人材の成長を促進し、その投資を価値創造に繋げることを意味します。また、従来の人事戦略から脱却し、企業理念や経営戦略に基づいた人事戦略を策定することも求められています。CHROの役割も重要で、経営戦略の実現に向けて人的資本を最大限に活用することが求められています。さらに、タレントマネジメントやHRBP(人事ビジネスパートナー)の存在も注目されています。これらは、戦略的な人事配置や人材開発を行い、事業戦略と連動させるために不可欠です。

経営環境に関連するキーワードとしては、「VUCA」や「アジャイル」、「レピュテーションリスク」、「非期待損失」などが挙げられます。VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、予測困難な時代を表しています。このような環境では、アジャイルな組織づくりが重要です。また、ネガティブな評判や噂が広がる「レピュテーションリスク」や、発生頻度は低いものの損失が大きい「非期待損失」、緊急事態への備えとしての「コンティンジェンシープラン」も注視すべきです。さらに、レジリエンス(回復力)を意識した組織づくりも、困難な状況への対応力を高めるために重要です。

これらのキーワードを理解し、実践に活かすことで、企業は変化の激しい環境に対応し、持続的な成長を実現することができるでしょう。



インフレと気候変動がESG投資に与える影響: 企業の対応と投資家の視点


近年、ESG投資がブームのように広まっていたものの、その注目度には変化が見られます。現在、「ESG投資は死んだのか?」といった疑問が浮かぶ中、適切な回答は「健在だが、問題に直面している」と言えるでしょう。

2022年、世界サステイナブル投資連合が発表したデータによると、ESG投資の残高は前年から14%減少しましたが、その額は依然として30兆ドル(約4500兆円)に達しています。ESG(環境、社会、企業統治)は、企業や経済社会の持続的な成長にとって欠かせない要素として認識されています。しかし、ESG投資には新たな挑戦が待ち受けています。

特に注目すべきは、米国での動きです。2024年11月に予定される米大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ氏が、ESG投資に対して厳しい姿勢を示しています。2023年5月にはフロリダ州でESG要素を投融資活動に反映させることを禁じる「反ESG法」が成立し、トランプ氏が当選すれば連邦レベルでのESG規制強化が予想されます。これにより、東京株式市場にも影響が及ぶ可能性があります。

また、金融業界の気候変動対応に詳しい日本総合研究所の大嶋秀雄主任研究員は、ESG投資が直面する二つの主要な課題を指摘しています。一つは世界的なインフレの影響です。気候変動対応や環境保護にかかる費用が増加する中、金利の上昇は資金調達コストを押し上げ、ESG関連の投資が困難になる恐れがあります。もう一つは、気候変動分野で設定された高い目標と現実とのギャップです。企業が脱炭素目標の設定やESG担当部署の新設を進める中、成果を出すことが難しい局面に直面しており、投資家の関心を引くことが難しくなっています。

実際に、ESG投資がどのようなリターンをもたらしているのかを見てみると、代表的なESG型ETFである「iFree ETF MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」と東証の「大型株」の値動きを比較したグラフから、ESG銘柄への投資が特別な利益をもたらすわけではなく、反ESG勢力の主張するような低い運用成績になるわけでもないことが分かります。MSCIジャパンESGは2017年9月の上場以来、約80%上昇し、東証の大型株も同程度の上昇を見せました。この傾向は、今後も続くと考えられます。

米系の大手運用会社インベスコ・アセット・マネジメントの内誠一郎氏は、「日本企業にとってESGはもはや特別なことではない」と述べており、ESG銘柄と大型株全般の値動きが似ている理由を説明しています。このように、ESG投資は依然として重要であり続けるものの、新たな挑戦と変化の中でそのあり方が試されています。



投資初心者必見!超低金利時代にお金を増やすための賢い投資戦略


お金を取り巻く環境は急速に変化していますが、「無理なく貯めて賢く増やす」基本を理解していれば、どんな状況にも適応しやすくなるでしょう。ここでは、その基本的な考え方についてお伝えしたいと思います。

まず、現代の超低金利の状況下では、銀行に預金するだけではお金は増えず、むしろインフレによって価値が減少してしまいます。だからこそ、これまでの常識を見直す必要があります。日経平均株価の上昇を見て、「高い」「危ない」と感じる方もいるかもしれませんが、長期的に見れば、今後さらに株価が上昇する可能性があります。AI(人工知能)の登場は、電気機器やインターネットが誕生した時と同じくらいの革命的な変化です。AIに直接関与する企業だけでなく、AIを導入して成長する企業も増えており、投資によってその成長の波に乗ることが重要です。

それに加えて、投資を始める前には、使う予定の資金と緊急事態に備えた資金を確保することが大切です。投資先はリスクを分散するために、債券などの安定した資産や金融商品を組み合わせてリスクヘッジを行うと良いでしょう。この土台は、年齢や家族の状況によって変わるため、年に一度の見直しが推奨されます。

また、「投資に3割」を意識することが大切です。投資の効果は「複利」によって拡大します。例えば、100万円を投資すれば、一般的な利益率でも10年ごとに倍増する計算です。早期に投資を始め、長期間にわたって成長させることが賢明です。具体的には、給与から自動的に積み立てられる「積み立て投資」が効果的です。

投資の方法はシンプルで、特に「インデックスファンドに投資して放置する」というアプローチが推奨されます。過去に個別株に投資して失敗した経験から、インデックスファンドでマーケット全体に投資することに決めました。国別に分散投資を行い、全世界の株式市場が一斉に下落しない限り、リスクを抑えることができます。ポジティブなニュースに集中しながら、期待感を持つことも大切です。

節約も忘れてはいけません。高収入でない場合でも、病気や失業、家族の問題など予期しない状況に備えるため、節約して投資に回すことが重要です。お金は状況によってその価値が変わるため、未来の困った自分にお金を送るつもりで節約するのが賢い選択です。ただし、節約する際には、自分への投資も大切にすることが求められます。記憶に残る、喜びを感じる使い方を心がけることが、成功への鍵です。



人口減少時代の成功戦略:日本が成熟社会に向けて進むべき道


日本が直面している人口減少という課題に対して、どのように対応すべきかを考えてみましょう。令和の時代に入り、私たちは本格的な人口減少の時代を迎えていますが、この変化をただのネガティブな現象として捉える必要はありません。人口減少を食い止め、社会を成熟させるためのステップを踏むことが求められています。

昭和の時代は、高度成長期という名のもとに、集団で一つの道を歩んでいました。物質的な豊かさを追求し、社会全体が一つのゴールに向かって進んでいたのです。しかし、現在はその山頂に達し、広い視界が広がっています。個人が自由に自分の生き方をデザインできる時代となり、それが経済的な活力やイノベーション、持続可能性、そしてウェルビーイングに繋がっています。

成熟社会における幸福のあり方は、人それぞれ異なります。基本的な衣食住が満たされた上で、コミュニティとのつながりや自己実現が求められます。特に、投資という観点からも、資産形成は幸福追求において重要な役割を果たします。成熟社会に向けて、個々の幸福を追い求めることが不可欠です。

ヨーロッパのいくつかの国では、経済と環境、福祉のバランスが取れた成熟社会が実現していますが、日本ではまだ道半ばです。物質的には豊かでありながら、常に不安を抱え、将来に対する展望が見えにくい状況が続いています。

大きな課題の一つは、財政問題です。日本は1000兆円を超える債務を抱え、高齢化が進む中で社会保障費も増加しています。税で賄うことが難しいため、政治家はこの話題から目を背けがちですが、そのツケは未来の世代に回されています。昭和の価値観に囚われた結果、経済成長や税収増加を期待するだけでは問題は解決しません。この思い込みが「失われた○年」と呼ばれる状況を招いており、特に上の世代には顕著な問題です。

そのため、若者が未来に希望を持てるようにするためには、教育を含む「人生前半への社会保障」の強化が不可欠です。共通のスタートラインに立つことができれば、未来への希望が生まれ、人口減少にも対処できるでしょう。

また、移民による解決策も議論されていますが、一般的な技能における移民採用は慎重であるべきです。専門的なスキルを持つ人の国境を越えた移動は良いですが、移民による分断を招かないように配慮する必要があります。

変化の兆しは確かに見えています。昭和的なモデルでは通用しないと感じる人が増えつつあります。例えば、学生たちの間では「スロー」「ソーシャル」「ローカル」という価値観が広がり、自然体で社会的意識が高く、地域に目を向ける傾向が見られます。ただし、この傾向が一部の意識高い層に留まっている現状もあります。

過去の外国人が日本を「のんびりした民族」と表現したように、日本人の価値観は社会の構造変化に応じて変わってきました。AI(人工知能)の進展も、雇用に対する影響を及ぼしますが、高齢化による人手不足を考慮すると、余剰と不足の相殺が進むかもしれません。

最新のシミュレーションによると、分散型社会や多様な生き方が日本社会全体のパフォーマンスを向上させる可能性が示されています。今後も人口減少が進む中での政策や対応を探るため、AIを活用した研究は続けられています。



日本銀行の金融政策が変わる!短期金利のコントロールに戻る理由とその影響


2024年現在、日本の金融政策について理解しようとする方にとって、これまでの複雑な内容は少しずつ整理され、基本が明確になってきています。日本銀行は、2024年3月に金融政策をシンプルな形に切り替え、より分かりやすいものとなりました。この機会に、金融政策の基礎をしっかり押さえておきましょう。

日本銀行、通称「日銀」は日本の中央銀行であり、普通の銀行とは異なる役割を果たしています。普通の銀行は、個人や企業からお金を預かり、また貸し出す役割を担っています。一方、中央銀行は普通の銀行がお金を預けたり借りたりする機関で、「銀行の銀行」として機能しています。

中央銀行の主な役割は、世の中のお金の借りやすさを調整することで、物価の安定を図ることです。例えば、景気が過熱して物価が急上昇しそうなときには、お金を借りにくくすることで物価の安定を保ちます。一方で、景気が悪化し物価が下落する時には、お金を借りやすくして経済の冷え込みを抑えます。物価が急激に変化することで、人々の生活や経済活動に悪影響が及ぶため、中央銀行はこの調整を行います。

特に、中央銀行がコントロールするのは短期金融市場の金利です。短期金利は、金融機関が日々お金を貸し借りする際の基準となり、長期金利にも影響を与えます。中央銀行は短期金利を調整するために、普通の銀行との間での預金金利や貸出金利を設定し、金融市場に対するお金の供給と吸収を行います。

近年、中央銀行は経済状況に応じた金融政策を展開してきました。以前は、経済が好調な時には短期金利を引き上げて過熱を抑える「金融引き締め」を行い、逆に景気が悪化した際には短期金利を引き下げて「金融緩和」を実施していました。しかし、日本では短期金利がゼロに近い状況が続き、国債の購入などで長期金利を直接抑える手段が取られてきました。2024年3月からは、これまでの多様な手段を見直し、短期金利のコントロールに重点を置く方針に戻したのです。

このように、中央銀行の金融政策は経済の状況に応じて変化し、物価の安定を目指しています。今後もその動向に注目し、金融政策の基本を理解しておくことが重要です。



GAFAMの成長と課題:マイクロソフトのクラウド戦略とグーグルの広告復調


2024年現在、業績が順調なビッグテック企業「GAFAM(ガーファム)」ですが、特に注目すべきはマイクロソフトです。マイクロソフトは、オンプレミスの製品群をクラウドサービスに移行することで、2023年6月期まで7期連続で増収増益を達成しました。この成果により、時価総額はアップルを抜いてGAFAMのトップに立ちました。

同社が注力しているのは、生成AI関連のサービスです。2019年から資本関係にある「チャットGPT」の開発会社、米オープンAIと連携し、2023年初頭にはオープンAIの大規模言語モデルをクラウドインフラ「マイクロソフト アジュール」で利用できるサービスを開始しました。このサービスの導入社数は5万3000社に達しています。また、AIアシスタント「コパイロット」も積極的に展開しており、「オフィス」やビデオ会議「チームズ」などを含む「マイクロソフト365」向けに月額30ドルで提供しています。サティア・ナデラCEOも「われわれのビジョンは非常に単純。コパイロットカンパニーだ」と期待を示しています。

一方で、広告王グーグルには不透明感が漂っています。検索エンジンとしての絶大な存在感を持つ同社ですが、2022年12月期にはマクロ経済環境の不透明感により広告需要が冷え込み、親会社アルファベットの減益決算を招きました。しかし、2023年10~12月期には四半期ベースで過去最高の業績を記録し、フィリップ・シンドラーCBOは「長期的な広告の成長について、引き続き上昇余地がある」と自信を見せています。

順調に事業を進めるGAFAMですが、社会からの責任追及が壁となっています。例えば、2024年1月には米連邦議会上院司法委員会がメタ・プラットフォームズなど大手SNSを運営する5社に対し、公聴会を実施しました。児童の性的搾取防止に向けた法案を推進するため、各社のトップに対して厳しい意見が交わされました。プライバシーや市場独占といった問題に直面し、イノベーションと社会との対話を両立させるバランス感覚が求められています。



ガバナンスの不条理から脱却し、成長型ガバナンスへ転換する


コーポレートガバナンスについて、筆者はその必要性を否定するわけではありません。むしろ、ガバナンスには「衰退型」と「成長型」の二つがあり、前者は全ての人に負担をかけ、利害関係者への責任を果たせないという点を強調したいのです。今回は、まずコーポレートガバナンスの基本的な概念と、日本の組織がどのように進化すべきかについて説明していきます。

多くの企業で「コーポレートガバナンス」という言葉が、政府からの押し付けや形式的な取り組みとして認識されているのが現状です。実務を知らない官僚たちが無駄な会議や書類を求めることで、企業の成長を妨げるといった状況が見受けられます。企業は、見せかけのガバナンスに従いつつ、実際には法の抜け穴を突いたり、管理書類をテンプレートで済ませたりすることが一般的です。このような体制は、資源の浪費を招き、最終的には「衰退型コーポレートガバナンス」と呼ばれる状況に陥ります。

衰退型ガバナンスでは、組織が表面的なガバナンスの要件を満たしていても、実際には資源を無駄にし、経営責任が厳しく問われるリスクが高まります。こうした状況から抜け出すためには、コーポレートガバナンスの本質を理解することが必要です。法人は社会に価値を提供するために存在し、法人格を持つことで契約や取引が可能になります。会社法などの法律は、法人が社会に価値を提供することを求めており、そのために適切なガバナンスが求められます。

法人に対しては、資源の集め方や組み立て方、価値創造の方法に規律が必要です。例えば、医療法人や弁護士法人など専門家組織では、人材重視のガバナンスが求められますし、金融市場が変わることで、ガバナンスの重点も変化します。重要なのは、労働力や資金などを預ける全ての人々に対して、法人がそれらを有効に活用し、適切な責任を果たすことです。

実際の現場では、衰退型ガバナンスが多く見受けられます。これは「価値を奪い合う競争相手」という考え方から始まります。経営者がリスクを恐れ、自己保身のために資源を貯め込み、制度をハックすることが最善とされる場合、社会の不信感が高まり、利害関係者との対立が深まります。これを改善するには、「資源は有限でも価値は無限に創造できる」という前提に立ち、利害関係者を「価値を共創する相手」として見直すことが必要です。

成長型ガバナンスを実現することで、すべての人が幸せになることが可能です。組織は無限の価値創造を体現するものであり、単なる人数の違いではなく、その価値創造の規模や質で差が生まれます。人類の歴史を正しく理解し、適切なガバナンスのあり方を見つけることが、今後の課題となるでしょう。



第2次トランプ政権誕生に備えるために世界が取るべき戦略


11月のアメリカ大統領選挙は、前例のない事柄が重なり、極めて不確定な状況が続いています。トランプ氏は2021年の連邦議会占拠事件など、多くの訴訟を抱えており、その影響は選挙結果にも影を落とす可能性があります。一方、現職のバイデン大統領は81歳という高齢であり、健康面での懸念がつきまとっています。

「アメリカには他に候補者がいないのか?」という声も聞かれますが、実際には優秀な人材がいるものの、大統領選には膨大な資金が必要です。例えば、選挙戦では1兆円近くの資金が集められます。また、時流に合った政策を打ち出し、圧倒的な知名度を持ち、政党をまとめるキャリアが求められるため、一定の年齢が避けられないのです。トランプ氏は77歳とは思えないエネルギッシュな活動を展開しており、民主党がバイデン氏を選ぶ理由の一つは、彼に一度勝利した経験があるからです。

現職の大統領は知名度の点で圧倒的な強みを持ち、対立候補の存在も少なく、予備選挙に資金を費やす必要がありません。しかし、バイデン氏の支持率は必ずしも高くなく、アメリカ全体の調査ではトランプ氏がしばしば支持率で上回っています。

アメリカの選挙は常に接戦であり、最後まで何が起こるかわからないのが常です。「オクトーバーサプライズ」というジンクスもあり、選挙前月に予期せぬ出来事が発生することがあります。2020年にはトランプ氏が新型コロナウイルスで重篤な状態に陥りました。

もしトランプ氏が勝利することになれば、国際貿易や経済分野での方向性には大きな違いはないと考えられます。どちらの候補者も中西部の労働組合を意識しており、日本製鉄によるUSスチール買収への反応も似ています。また、中国に対する厳しい態度も共通しています。トランプ氏は高い関税を課す方針を掲げており、バイデン氏もトランプ政権時代に設定された関税を撤廃せず、新たな規制を導入しています。

一方で、環境問題に対する姿勢には違いがあります。トランプ氏が再びパリ協定から離脱する可能性があり、その場合、クリーンエネルギー化に向けた国際的な取り組みが難しくなり、多くの産業に影響を与えるでしょう。また、「アメリカファースト」の政策が強化され、安全保障に対する世界の対応が求められることになります。

アメリカ大統領選は、同国の現状を反映した鏡のようなものです。過去数十年の変化が選挙の様子からよくわかります。例えば、民主国家でありながら候補者の一人が「過去の選挙結果を認めない」と述べ、その言い分を受け入れる人が多数出るという現象が見られます。また、移民国家でありながら、不法移民への問題意識が高まり、大きな争点となっています。トランプ氏が再び政権を握れば、分断はさらに深まるでしょう。

第2次トランプ政権が誕生すれば、アメリカは同盟国に対して甘えを許さない姿勢を取る可能性が高いです。世界の国々は、この機会を自らの独立性を高めるプロセスと捉えるべきでしょう。



米国のデカップリング政策と日本経済への影響


「デカップリング」という言葉は、トランプ前政権時代から使われるようになりました。これは、経済的に他国との関係を切り離すという意味で、具体的には輸入品に高い関税をかけることを指します。特に中国製品がターゲットで、トランプ氏は中国の安価な製品がアメリカの製造業を衰退させたと考え、これを防ぐために中国製品の流入を阻止しようとしたのです。

以前は中国がアメリカの最大の貿易相手国でしたが、現在ではメキシコやカナダがその座に取って代わっています。デカップリングの成果のように見える一方で、企業が購入する部品や日用品の価格が上昇し、結果としてアメリカのGDPには悪影響を及ぼしています。全体としては、デカップリングの影響はマイナスが大きいのではないかと思われます。

バイデン政権はトランプ政権の方針を全面的に否定してきましたが、対中国政策には似たようなアプローチを取っています。大統領選挙が迫る中、関税の引き上げも考えられますが、現政権が最も重視しているのはハイテク分野です。特に半導体やAI(人工知能)の輸出規制を通じて、中国の軍事力強化を抑えようとしており、半導体製造技術を持つオランダや日本にも協力を求めています。「スモールヤード・ハイフェンス」戦略のもと、最先端技術の流出を防ぐ取り組みが進められています。

中国側も「中国製造2025」を掲げ、自国での製造能力を強化しようとしています。反スパイ法により、最先端技術の流出にも神経を尖らせており、この法令の恣意的な運用が海外企業の中国ビジネスや投資を難しくしています。

デカップリングの影響で、米企業の製造拠点はメキシコ、ベトナム、タイなどに移転していますが、日本はこれまであまり恩恵を受けていません。多くの日本企業が中国に拠点を持ち、中国から部品を調達しているためです。

トランプ氏が再び大統領になると、彼は中国製品への関税を25%から最終的には60%に引き上げると発言しています。これが実現すれば、中国との貿易は大幅に減少し、中国製の材料や部品を使用した製品はアメリカ市場では販売が難しくなるでしょう。

一方、バイデン氏が大統領に再選されれば、デカップリングよりもリスクの低減を重視した「デリスキング」アプローチが取られる見込みです。ハイテク分野、特に半導体、AI、量子コンピューター、バイオテクノロジーにおける対中輸出規制が強化されるでしょうが、アメリカから海外への投資拡大も期待されます。この投資拡大は、日本企業にとって大きなメリットをもたらす可能性があります。

まとめると、トランプ氏が勝利した場合、日本経済には大きな影響が予想されます。バイデン氏が勝利した場合、影響は主にハイテク分野に限定されるでしょう。しかし、中国が引き起こしている問題は継続し、日本企業にとっては中国依存を見直すことが急務となります。



地政学リスクと投資戦略:非合理性を理解してリスクを減少させる方法


最近では、株式投資における「地政学リスク」という言葉がよく耳にするようになりました。この言葉が使われ始めた背景には、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻や、2023年10月以降のパレスチナ自治区ガザでの戦闘など、国際情勢の緊張があります。しかし、この用語が具体的に何を指すのか、漠然とした理解のまま使われることも多いようです。

私の見解では、「地政学リスク」は「経済合理性で測れないリスク」と定義できます。つまり、経済よりも安全保障や生命が優先される概念です。実際、戦争は経済的にはほとんど理にかなっていないケースが多いのです。例えば、ウクライナ侵攻の直前には、「欧米の経済制裁を招く戦争は自滅行為であり、ロシアは戦争を回避するはずだ」と分析する専門家が少なくありませんでした。それにもかかわらず、戦争は勃発し、ロシアのプーチン大統領は数十兆円規模の損害を受けながらも侵略を続けています。結果的に、日本や欧米の企業も撤退を余儀なくされ、世界経済全体に深刻な影響を及ぼしました。

プーチン氏は実は2021年に、ウクライナ侵攻の理論的根拠となる論文を発表していました。そこではウクライナの独立性を否定し、その国境の正当性に疑問を投げかけていたのです。このような背景情報があったにもかかわらず、なぜ多くの政府や企業、金融関係者は準備を怠ったのでしょうか。それは、現状が続くという願望バイアスや、平和時の経済合理性を最優先する思考に囚われていたからに他なりません。

歴史を振り返ると、こうした誤算はよく見られます。ナチスドイツのヒトラーは1926年に出版した『わが闘争』第2巻で、東欧やソ連の領土を奪う野心を示していましたが、当時の多くの人々は「政権を取ったらそんなことはしないだろう」と軽視し、結果的に1939年の第2次世界大戦が勃発することとなりました。

プーチン氏やヒトラーが周囲の国にとって非合理な行動に出たのは、彼らの世界観の中で自国の長期的な生存や権威向上のために不可欠だと考えたからです。これは西側諸国が重視する人権や法の支配とは異なり、適者生存や弱肉強食の世界観が反映されています。このような価値観の中では、彼らなりの合理性が存在するのです。

最近では、中国の軍事的台頭に対して「台湾有事」の可能性が取り沙汰されています。習近平国家主席は台湾統一の野心を隠しておらず、日本や米国は警戒を強めています。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は、習氏が2027年までに台湾侵攻を成功させるための準備を指示したと述べましたが、台湾侵攻が実際に起こるかどうかは不透明です。中国のトップが最優先するのは自国の保身と安全保障であり、そのためには経済的合理性が無視されることもあります。

中国は国民の選挙でリーダーを選んでいないため、トップの権力の正統性は不安定です。選挙のない現代において、国民を納得させるためには一般市民の生活を豊かにすることと、戦争に勝つことが重要とされています。習氏は前任者とは異なり、建国世代から選ばれたわけではなく、戦争経験も乏しいため、権力の正統性を高めるために軍事行動に出るリスクが高いのです。日本が「ウクライナ戦争は他人事ではない」と警鐘を鳴らすのは、こうした背景を理解しているからです。

政治と経済の合理性が大きく異なるのは、権威主義国家だけに限りません。米国のように大統領選が注目されている国でも、政治的な力学が政策に大きな影響を与えます。たとえば、共和党のトランプ前大統領が勝利すれば、バイデン大統領が推進していた国際協調政策は一時的に否定されるでしょう。国内政治の都合で、対外的には理にかなわないことでも実行される可能性があります。

米国が内向き志向を強める中で、世界各地で軍事的関与が減少することも地政学リスクとして意識されています。国内で「自国のためにお金を使ってほしい」という意見が強まり、政治家もその意見に迎合する傾向があります。トランプ氏らの「アメリカファースト」を掲げる政治家は、基軸通貨ドルを持つ超大国の地位が揺るがないとの自信を持っています。

世界の投資家にとって米国は依然として確実なリターンを見込める投資先とされていますが、米国が平和秩序の提供者としての役割を減らすことで、各国の米国に対する信頼は低下するでしょう。すでに貿易で使用されるドルの割合は減少傾向にあり、欧州や中東の機関投資家は分散投資を意識しています。そのため、長期的な視点から日本の株式など政治リスクが小さい投資先への関心が高まってきています。

このように、地政学的リスクを理解し、リスクを低減するためには経済だけでなく、政治や人間の非合理性にも目を向ける必要があります。日本でもこの認識が広がりつつあります。『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』を投資関連書籍として読んでいただけると、より深く理解する助けになるでしょう。



お金の本質と成功の法則:資本主義と経済学を学ぶための必読書リスト


お金を儲けるためには、そのためのルールを知っておくことが不可欠です。たとえるなら、野球の試合で勝つためには野球のルールを熟知しておかなければならないのと同じことです。金融や経済、そしてそれらを包含する資本主義のルールを理解することが、金儲けの第一歩となります。これさえ把握していれば、資本主義というゲームを戦うための資金があれば、儲けるチャンスは広がります。書店で見かける多くの経済や投資に関する本は、まさにこのゲームの戦略を提供するノウハウ本です。その中心的な問いは「それって儲かるのか?」というものです。

しかし、ヘーゲル的な視点から見ると、これには人間の進歩が欠けています。物事をより高い次元で捉えようとする弁証法的な視点が欠如し、単に「強い者が勝つ」という弱肉強食の論理を異なる言葉で置き換えているに過ぎません。そこで、私たちはお金や資本主義にどのように向き合い、そこに幸せを見出すのか、よりメタな視点が求められます。そうした視点を提供してくれる本を、ここで10冊ご紹介します。

貨幣の起源は古代からさまざまな形態が存在しましたが、その成立理由については意見が分かれています。例えば、紀元前4世紀のアリストテレスは、貨幣の機能を価値尺度や交換手段としての必要性から説明しています。「貨幣はそのものに価値があるわけではなく、社会的な合意や契約によって成り立っている」という考え方は、貨幣法制説として知られています。近代経済学の父、アダム・スミスも同様の見解を持ち、『国富論』では「貨幣は商品が買えるから価値があるに過ぎない」と述べています。

貨幣の本質を体系的に論じたのが、マーティンの『21世紀の貨幣論』です。彼は通貨を「譲渡可能な信用という社会的な技術」として捉えています。経済学の起源について、ハラリの『サピエンス全史』では、人間が作り出した虚構が伝説や神話を生み出し、協力を可能にしたと述べています。経済面での貨幣、政治面での国家、精神面での宗教は、その最も普遍的で効率的な相互信頼の制度とされています。

経済学自体は、価値判断を行わず、数学的モデルの構築と分析に重点を置きます。近代経済学は「価値は効用で決まる」という効用価値説を打ち出し、限界革命を起こしました。一方、ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』では、近代資本主義の精神的根拠をプロテスタンティズムの勤勉と貯蓄に求め、社会科学は自らの価値理念から自由になれないとしています。

ポラニーの『大転換』では、市場経済が社会を飲み込む様子を「悪魔のひき臼」と表現しています。ウォーラーステインの『近代世界システム』は、近代の資本主義的世界システムの成立過程を明らかにしました。マルクス経済学では資本主義の枠組みそのものが問われ、斎藤幸平の『人新世の「資本論」』では、マルクスの循環型社会の実現が人類の存続可能性を担保するものとされています。

経営哲学としては、ドラッカーの『企業とは何か』があり、企業の社会的使命について考察しています。また、日本独自の視点を示す渋沢栄一の『論語と算盤』や、宇沢弘文の『社会的共通資本』も、経営や社会における価値観を深く掘り下げています。最後に、クリステンセンの『イノベーション・オブ・ライフ』は、企業人の生き方に焦点を当て、自分の価値観に従って生活することの重要性を説いています。

資本主義社会の中でどう生きるのかを決めるのは、最終的にはあなた自身の選択にかかっています。







  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*