問題117
次の事例を読んで、問題117から問題119までについて答えなさい。
〔事例〕
Kさん(80歳、女性)は夫が亡くなった後、自宅で一人暮らしをしていた。ある日、一人娘のLさんが訪ねると、ごみが散乱しており、冷蔵庫の中には古くなった食材がたくさん入っていた。
変化に驚いたLさんはKさんと病院を受診したところ、認知症(dementia)と診断された。Lさんは、Kさんに家庭的な雰囲気の中で生活をしてほしいと考えた。その結果、Kさんは認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を利用することになった。
入居して1週間が経過し、Kさんと関わったM介護福祉職は、Kさんは短期記憶の低下により、最近の出来事については話すことは難しいが、自分が学校に通っていた頃の話や、子どもの頃に歌っていた歌については生き生きと話すことを確認した。
問題117 M介護福祉職は、Kさんが今持っている認知能力を活用して、ほかの利用者と交流する機会を作りたいと考え、Kさんとほかの利用者に参加してもらう活動を企画することにした。
M介護福祉職が企画した活動の手法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 リアリティ・オリエンテーション(reality orientation)
2 ピアカウンセリング(peer counseling)
3 スーパービジョン(supervision)
4 回想法
5 社会生活技能訓練
Kさんが持っている認知能力を活用して、ほかの利用者と交流する機会を作るために、最も適切な活動手法は「4 回想法」です。
回想法は、過去について話をすることで、認知症の人でも自己アイデンティティを保ち、自信を持って生活できるように支援する手法です。Kさんが自分が学校に通っていた頃の話や、子どもの頃に歌っていた歌について生き生きと話すことができたことから、この手法が適しています。
一方で、リアリティ・オリエンテーションは、認知症の人に現実を認識させ、現在の状況を把握するようにする手法です。しかし、Kさんは短期記憶の低下があるため、最近の出来事については話すことが難しいことが分かっています。
ピアカウンセリングは、同じ経験を持つ人同士が話し合い、支援しあう手法ですが、Kさんが初めて利用する共同生活介護の利用者であるため、この手法は不適切です。
スーパービジョンは、職場における支援や発達を促進するために、職場の指導者によるサポートのことであり、この手法は介護福祉職自身の支援方法に関するものです。
社会生活技能訓練は、認知症の人に日常生活の技能を訓練する手法であり、Kさんが今必要とする支援とは異なります。