IT業界で働くなら常識☆全ての社会人に知ってほしいITシステム戦略の基本

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IT業界での就職や転職を目指すなら常識であるばかりか、IT社会の現在では全てのビジネスマンが常識として知っておくべきITシステム戦略の基本を解説しよう。

情報システム戦略


「情報システム戦略」は、企業が経営戦略や各事業に関する事業戦略としてあげた事項を実現するた めに必要です。

企業は自社の経営戦略、事業戦略を実現するために、現状の業務を分析し、自社にとって最適な情報システムの導入を行います。

単なる日常の定型業務のシステム化ではなく、中長期的な経営戦略を視野に入れたうえでのシステム化を企画し導入することが「情報システム戦略」です。

経営の視点から見た「情報システム化」による効果は強力でしょう。

例えば営業支援システムを導入することにより、営業業務が効率化され、コストダウンに加えて新たな営業機会を作り出せます。

蓄積された大量の営業データを分析することにより、新規マーケット拡大など、新たな取組への意思決定が迅速化するのです。

さらに「エンタープライズサーチ」といって、組織内に点在する大量の資料・データ群から目的のものを見つけるための企業内検索エンジンを使っての文書管理も行われています。

情報システム戦略目標

戦略目標

「情報システム戦略」策定のためには、経営戦略をふまえて、現状の業務分析を行ったうえで、理想のビジネスモデルを検討します。

「情報システム戦略」の策定における手順は以下の通りです。

第1に、現状の中長期的な経営戦略を把握します。

次に、現在行っている業務を把握し、問題点や制約事項を調査し分析。業務において、現状どのような情報システムを利用しているか調査し分析します。

これらの調査・分析結果をもとに、情報システムを導入する必要があるか否か、導入するのであれば、どのような情報システムを導入するか検討し、全体的な基本戦略を策定するのです。

基本戦略をもとに、情報システムの導入によって変化するであろうビジネスモデルの新しいイメージを作成します。

業務の全体がモデル化できたら、具体的に業務のどの部分をシステム化するかの検討をし、それに対する投資対効果の目標値を決定。

全手順が完了したら、具体的な情報システム戦略を策定するのです。



エンタープライズアーキテクチャ

エンタープライズアーキテクチャ 業務をモデル化することで業務にあったシステムを設計し、管理する手法に「EA(Enterprise Architecture):エンタープライズアーキテクチャ」があります。

EAは、組織全体の業務とそれに対応した情報システムを最適化して、効率的な組織運営を行う手法です。

「アーキテクチャ」とは設計や構造という意味で、EAでは、現状モデルを「As is モデル」、現状モデルが最適化した理想モデルを「To be モデル」と定義します。

それぞれを4つのアーキテクチャの観点から比較することで、達成すべき目標(Next モデル)を明確にするのです。

なお政府の「業務・システム最適化」では、このNext モデルを省略して、As is モデルとTo be モデルで整理する手法をとっています。

4つのアーキテクチャは、以下のものです。

組織の目標や業務を体系化したビジネスアーキテクチャ(BA) 業務で使用するデータの構成やデータ間の関連を体系化したデータアーキテクチャ(DA) 業務とそれを実現するアプリケーションプログラムの関係を体系化したアプリケーションアーキテクチャ(AA) アプリケーションプログラムとハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどの技術を体系化したテクノロジアーキテクチャ(TA)

その他情報システム戦略に関連する用語として以下のものがあります。



SoR、SoE

どちらも企業のIT システムで使われる用語。SoR は“System of Record”の略で、「記録のためのシステム」という訳の通り、データを処理する従来型のシステムのイメージ。一方SoE は“System of Engagement”の略で、「エンゲージメントのシステム」。

ここで使われるエンゲージメントは、顧客とのつながりの形成からそのつながりを維持するという意味で、SoE は顧客とのつながりを構築するシステムといえる。

フロントエンド、バックエンド

プロセスの最初と最後を示す用語。 システム開発では、フロントエンド(front-end)は、ユーザと直接やりとりをする部門、バックエンド(back-end)は、操作や入力された内容を処理する部門を指す。Web ページの入力フォーム画面を例にすると、画面のUI やHTMLがフロントエンド、入力された内容をデータベースに格納して的確な処理を行 うプログラムがバックエンド。

マーケティングでは、フロントエンド商品とは、顧客を集める「集客商品」であり、バックエンド商品は収益を生む「収益商品」という意味。化粧品販売を例にすると、試供化粧品がフロントエンド商品、定期販売される化粧品がバックエンド商品となる。

基幹業務システムに関連する情報システムの例

基幹業務システムに関連する情報システムの例

企業の情報システムのうち、業務内容と直接かかわる生産管理、購買管理、在庫管理、販売管理、顧客管理、会計管理、人事管理等の機能を持つ情報システムを基幹業務システムといいます。

全社的な情報システム戦略を考えるうえで、基幹業務システムに関する知識は、欠かすことができないものです。

主な基幹業務システムに関連する情報システムについて見てみましょう。

「ERP」とは、企業資源計画のことで、全社的に最適化された企業活動が可能になるように、経営資源(人、モノ、カネ、情報)を有効活用することを目指します。生産管理、販売管理、会計管理、人事管理などの基幹業務全体をシステム化して、全体を管理します。

「SCM」とは、サプライチェーンマネジメントのことで、部品や資材の調達から商品の生産、流通、消費に至るまでの流れを効率よく管理する考え方です。

SCMシステムを導入することで、無駄な在庫や生産を減らし効率化をはかり、全体の経営効率を上げます。

「CRM」とは、顧客関係管理のことで、店舗やコールセンタ・Webなどから入る購買履歴や問い合わせ履歴などの顧客情報を一括管理する考え方です。CRMシステムを用いて、顧客に最適な対応を実施して、顧客との良好な関係を構築することができ、販売促進につながります。

「SFA」とは、営業支援システムのことで、営業活動を支援するシステムのことです。顧客情報や顧客との商談履歴、営業担当者のスケジュールなどを効率的に管理します。

「MRP」とは、資材所要量計画のことで、生産計画にしたがって、生産に必要な各部品の部品構成表(BOM:Bill of Materials)や在庫データをもとに、資材の必要量・発注量などを算出し、効率よく資材を管理する考え方です。MRP の実施を支援するシステムがMRPシステムです。



業務プロセス

業務プロセス把握

経営戦略や事業戦略に沿った業務のシステム化を行うためには、現状の担当業務プロセス(業務の流れ)をモデル化して分析します。

問題点を改善した新しい業務プロセスを構築する必要があります。

業務活動を正しく把握することがモデリングの目的であり、現状の業務活動を図や表を使って表します。

具体的なモデリングの手法としては、以下のものがあります。

データの関連を示した「E-R 図」、データの流れで業務の流れを示したデータフロー図「DFD(Data Flow Diagram)」

ソフトウェアの機能や構造を表記する「UML(Unified Modeling Language):統一モデリング言語」

業務の流れを業務担当者にも分り易く記載できる「BPMN(Business Process Modeling Notation)」

E-R図

拡張E-Rモデル

「E-R 図」とは「エンティティ(実体):E」、「リレーションシップ(関連):R」を使って、データの関連を表示する手法です。

「エンティティ」や「リレーションシップ」は、いくつかの属性を持っていて、これを「アトリビュート(属性)」といいます。

図は、商品を購入した顧客と商品の関係を表したものです。顧客には名前や住所などの属性があり、商品にも商品番号や商品名などの属性があります。2つを受注という関係でつないでいるのです。

画面の赤枠は「拡張E-R モデル」を表した図です。「顧客」と「商品」の関係が多対多の関係です。

E-Rモデルの表記方法には、IDEF1X、IE 記法、バックマン記法等複数存在します。また、UML のクラス図でデータモデルを表現することもあります。

E-R 図は、RDB(リレーショナルデータベース:Relational Database)の設計にそのまま使用することができます。

ただし、多対多の関連はRDB に登録することができないため、顧客と商品を結び付ける新たなエンティティを作成し、1 対多、多対1の関係に分割。

この整理を正規化といいます。それぞれ、顧客に関しては「顧客番号」、商品に対しては「商品番号」を連結キーとして設定し、RDBに登録できるようにするのです。



DFD(Data Flow Diagram)

DFD(Data-Flow-Diagram)

「DFD(Data Flow Diagram)」とは、企業の業務プロセスを洗い出し、そのデータの源泉と最終的な出力先を、データの流れに着目して図式化したものです。

一般的に業務の記述や分析に用いられるモデリング手法になります。

DFDは、「データフロー」「プロセス」「データストア」「データの源泉と吸収」の4要素で表現されます。

DFD(Data-Flow-Diagram)



UML(Unified Modeling Language):統一モデリング言語

UML

「UML(Unified Modeling Language):統一モデリング言語」とは、ソフトウェアの機能や構造を表現する記法で、業務分析や要件定義を行うことができます。

UMLでは13種の図があり、それぞれ目的に応じて使い分けられていますが、ここでは、代表的な3つ「ユースケース図」、「アクティビティ図」、「クラス図」について解説しましょう。



ユースケース図

ユースケース図

「ユースケース図」とは、システムにどのような機能があるか利用者側の視点で表現した図です。システムの利用者と、その利用者に提供する機能との関係を表す図です。

システムを利用する人(管理者含む)のことを「アクタ」、システムが利用者(管理者含む)に提供する機能のことを「ユースケース」といいます。

「アクタ」と「ユースケース」を関連づけた図がユースケース図です。

アクタとユースケースの関連を表現することで、利用者とシステムの関わりがわかり、要件定義を図式化できます。

図は、通信販売(以下、通販という)システムを機能の一部をユースケースとして表示して、各システムの機能に関わる人をアクタとして表示しています。



アクティビティ図

アクティビティ図

「アクティビティ図」とは、業務の流れを記述した振る舞い図の一種です。

処理の実行順や条件分岐の流れを示し、処理を役割別に「レーン」(枠)を分けて記述しています。

例では、通販の利用者と通販会社の2レーンに分かれています。

2つのレーンに分けることで、それぞれの流れにおける業務分析を行うことができるのです。

図は、「通販で商品を購入する」という例をアクティビティ図として、図式化したものです。

通販利用者と通販会社を分けることで、それぞれの流れが明確になり、業務分析ができるようになります。



クラス図

クラス図
「クラス図」とは、業務やシステムの概念とその関連を表した構造図の一種です。

クラス図は「クラス名」「属性」「操作」で構成されています。

「クラス名」とは、そのクラスの個別の名称で、例では「在庫」「商品マスタ」「発送データ」とつけています。

「属性」とは、クラス内に登録される項目(変数)のことで、「在庫」を例にすると商品コードや在庫数になります。

「操作」とはそのクラスで行われる命令のことで「商品マスタ」を例にすると、商品の登録が該当します。

図は、商品配送システムを表したクラス図の一部です。それぞれのクラスは、属性と操作をもっています。

また、クラス間の構成を表す要素として多重度があります。商品マスタクラスに対して、発送データクラスは複数が対応しており、1 対多の関係であるということを1と*で示しているのです。



業務改善および問題解決

業務改善及び問題解決
業務プロセスの現状がモデル化により明確になったら、その内容を分析し、改善点や問題点を洗い出します。

そして洗い出された改善点や問題点からシステム化を検討する必要があります。

また長年にわたり同様の業務プロセスで活動していると、環境や時代の変化に耐えられなくなるものです。

定期的に業務プロセスを見直すことで、大きな効果が生まれることもあります。

業務プロセスの見直し・改善の手法としては、「BPR(Business Process Reengineering)」「BPO(Business Process Outsourcing)」「BPM(Business Process Management)」「ワークフロー」「JIT(Just In Time)」などがあります。



BPR(Business Process Reengineering)


「BPR(Business Process Reengineering)」とは、現状の業務プロセスや企業構造を抜本的に見直し、組織構造・業務フロー・情報システムなどを再構築して、コストダウンや製品・サービスの品質向上を図るビジネスアプローチのことです。

「BPO(Business Process Outsourcing)」とは、自社の業務プロセスの一部を継続的に外部の企業に委託することです。これにより業務の効率化を図るのです。単にアウトソーシングとも言います。

具体的には、システム開発の一部の工程やデータセンタの管理、コンタクトセンタ(コールセンタ)での対応等があります。

自社の業務の一部をアウトソーシングすることで、自社の限られた経営資源を別の業務に割り当て、有効活用できるというメリットがあるのです。

アウトソーシング先が海外(オフショア)の場合もあり、オフショアアウトソーシング、グローバルアウトソーシングなどです。

「オフショア開発」とは、システム開発を海外に委託することを言います。また業務自体を海外で運用することを「オフショア運用」と言われます。

地域によっては、自国で開発するよりもコストを削減できたり、広い範囲から多くの優秀な人材に依頼できたりするというメリットがあるのです。

オフショア開発やオフショア運用に際しては、情報セキュリティの観点から、サプライチェーンリスクを適切に評価し、対応することが大切です。



BPM(Business Process Management)


「BPM(Business Process Management)」とは、業務プロセスを継続的に見直し、改善していくための業務管理の手法です。PDCA(Plan Do Check Act)サイクルで、業務プロセスの改善や問題解決を継続的に行います。



ワークフロー


「ワークフロー」とは、ビジネスに関する情報や業務が円滑に流通するように、手続きを整理し規定した処理手順のことを示します。

「ワークフローシステム」とは、ワークフローを実現するための情報システムです。

例えば機器を購入するにあたり、申請書類の起案から稟議決裁に至るまでの一連の定型業務をシステム化したものがこれにあたります。

また最近では、RPA(Robotic Process Automation)といわれる、事務職のデスクワークや定型作業を自動化するソフトウエア型ロボットを利用した、正確にかつ作業効率をあげる手法もあります。

JIT(Just In Time)


「JIT(Just In Time)」とは、業務プロセスにおいて必要な資源を必要なときに必要な量だけ投入する考え方をいいます。

代表的な例としては、トヨタ自動車で行われたトヨタのかんばん方式です。

自動車工場の生産ラインにおいて、自工程の生産状況に合わせて、必要な部品を必要なだけ前工程から調達する仕組みが整っています。



IT有効活用


ITを有効活用するには、利用者一人一人がコンピュータを使いこなすための知識である「コンピュータリテラシ」が必要です。

またコンピュータ等で情報を活用する知識である「情報リテラシ」を習得したうえで、情報システム化を推進する必要があります。

すでに導入されているグループウェアやコミュニケーションツールの活用は、円滑なコミュニケーションのみならず、情報システム化の推進にも役立ちます。

「コンピュータリテラシ」とは、コンピュータを適切に使用して、日常の業務を効率的に遂行できる能力や知識のことです。

「情報リテラシ」とは、情報を使いこなす能力のことです。具体的には、コンピュータを活用して情報の収集や取捨選択をすることや、収集した情報を集計して傾向を読み取るなどの分析ができる能力のことです。

情報リテラシを身に付けることにより、問題解決や意思決定に必要な情報を活かすことができ、情報システム化推進に役立つ人材になれます。



システム活用促進・評価

業務改善及び問題解決

IoTやAIなどITの発展の一方で、「ディジタルディバイド(Digital Divide):情報格差」が新しい格差として注目される現在、情報をどう活用していくかは企業の成長を左右する大きな課題です。

情報システムを活用するために、ゲームの要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」という手法を使ったわかりやすい教育を行う必要があるでしょう。

デジタルコンテンツを制作する側も、高齢者や障がい者を問わず誰もが利用できるよう考慮する「アクセシビリティ」の思考が求められています。

情報システムを構築する際には、構築に投資する費用に対してどの程度の効果があるかを分析する「費用対効果分析」、運用時にはどの程度の「メンテナンスコスト」がかかるかの検討が必要です。

「利用者満足度調査」を定期的に行い検証を行うことが、情報システムを維持管理する上で重要です。

システムを安定して稼働させるための体制を作る一連の流れを「システムライフサイクル」といい、設計から製造・運用・廃棄までのステージで検討を行います。

かなり以前に構築され、新しい技術を適応するのが困難な「レガシーシステム」については、安全性や効率性が低下しているので廃棄や刷新を検討することが望ましいです。



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