
人々の社会経済活動がオンラインに移行し、組織に所属していない個人の影響力が増大した。
youtubeやSNSなどで個人として強い発信力を持つインフルエンサーの言動にも世間が注目している。
そんななか会社組織に所属せず個人で仕事を請け負い、会社員以上の稼ぎや自由を手にするフリーランスが台頭している。
一言にフリーランスと言ってもその活動実態は千差万別で、中には会社が人を雇用するリスクを回避するためにフリーランスを都合よく使っている事例も散見される。
会社と雇用契約を締結する社員とは異なり、フリーランと呼ばれる人たちは法的にどのような位置づけにあるのだろうか。
フリーランスにかかる法律知識を整理しよう。
フリーランスという名のもとの業務委託契約
労働と言えばどこかの会社の勤務し、会社の方針や上司の指示・意向に従って業務を執り行うものです。
通常、使用者である会社と労働契約を締結し、一労働者として会社の「指揮監督」のもとに働きます。
労働契約のもとでは、会社は労働者に対して指揮命令権を持つことになります。
ところが、労働基準法上の労働者とされれば、会社は労働者に対する様々な義務を負わなければなりません。
強力な解雇規制に始まり、労災・雇用保険料の支払いや安全配慮義務、労働時間規制など会社が労働者を雇う負担は想像以上に大きなものです。
そこで、会社が従業員と雇用契約を結ばず、個別の業務を依頼する「業務委託契約」が締結されることがあります。
業務委託契約を締結したうえで仕事をする場合、労働者ではありませんので、会社は指揮命令権を持たず、仕事を請け負う受託者は「個別の仕事の完遂」の義務だけを負うことになるのです。
一般的にフリーランスと言われる場合、仕事の委託者である会社と業務委託契約を締結していると考えられるでしょう。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働者性の有無が重要
会社と雇用契約を結ぶ場合、労働基準法上の労働者として「労働者性を有する」とされます。
業務委託契約などで、個別の仕事を請け負っているだけの場合、「労働者性は有しない」と考えられます。
この労働者性を有するかどうかを判断するにあたっては、以下の点が判断材料になります。
・拘束性の有無、程度
・報酬が出来高制かどうか
また仕事をする上で、ある程度の時間的・場所的拘束を伴い、基本給として一定の給料が保証されているのが一般的です。
一方の、業務委託契約では、仕事に対しての対価という性質が強いため、完全出来高であると同時に、指揮命令権や時間的場所的拘束は弱いものと考えられます。
慣例上「個人事業主」として勤務する人々
多くの場合労働者は、どこかの会社に雇用されて仕事をすることが多いでしょう。会社と雇用契約を締結することで、その会社の労働者と認められ、年金や健康保険などの社会保険手続きが会社を通じて行われます。
もちろん会社を辞める時は雇用保険の失業手当が受けられますし、勤務中のケガや病気は労災保険によって補償されるなど、会社の労働者であることによって手厚いセーフティーネットがあるのです。
しかし世の中には、一見会社に雇用されているように見えて、実は「個人事業主」として働くことが一般的な仕事があります。
例えば、キャバクラやホストクラブのような水商売の多くは、客の接客を担当するキャストを個人事業主として位置づけています。キャストとお店の間では雇用契約は結ばれず、業務委託契約が締結されるのです。
これらの水商売のキャストは、売上に基づく歩合性の給料を採用しているのが一般的であり、毎月決まった金額が支払われることが想定されていません。
一方でガールズバーなどを中心に、完全な歩合ではなく最低保証としての時給が定められていることも多いです。
店からの指揮監督があり、出勤中は基本拘束されて仕事を行うわけですから、かなりグレーな「個人事業主」と言えそうです。
その他大手美容院では、各店舗で接客するスタイリストと業務委託契約を締結し、スタイリストを個人事業主として位置づけています。
実際に雇われているように見えても、個々のスタッフが一定程度独立してそれぞれの仕事をこなしている場合は、業務委託契約に基づく個人事業主と位置づけられる実態があるようです。
「労働者性」が争われた裁判例
藤沢労基署長事件(平成19年6月28日最高裁)
本判決では、B株式会社で働いていたとある大工に関して、仕事をする上で一定程度会社の指揮監督下にあったことは認めつつも、完全出来高払制で幅広い裁量権や自由を持っていた事情を鑑み、大工の労働者性を否定しました。
上告人である大工は、工事に従事するに当たり、B株式会社の指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできない。
Bから上告人に支払われた報酬は、仕事の完成に対して支払われたものであって、労務の提供の対価として支払われたものとみることは困難であり、上告人の自己所有の道具の持ち込み使用状況、Bに対する専属性の程度に照らしても、上告人は労働基準法上の労働者に該当せず、労働者災害保険法上の労働者にも該当しないというべきである。
上告人である大工の「労働者性」が否定された理由は、以下のとおりである。
●上告人である大工は、B株式会社からの求めに応じて工事の大工仕事に従事していたものであるが、仕事の内容について、仕上がりの画一性、均質性が求められることから、Bから寸法、仕様等につきある程度細かな指示を受けていた。
しかしながら、具体的な工法や作業手順の指定を受けることなく、自分の判断で工法や作業手順を選択することができた。
●上告人である大工は、作業の安全確保や近隣住民に対する騒音、振動等への配慮から所定の作業時間に従って作業することが求められていた。
しかしながら、事前にBの現場監督に連絡すれば、工期に遅れない限り、仕事を休んだり、所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時間前に作業を切り上げたりすることも自由であった。
●上告人である大工は、当時、B以外の仕事をしていなかったが、Bは、上告人(大工)に対し、他の工務店等の仕事をすることを禁じていたわけではなかった。
Bと上告人との報酬の取決めは、完全な出来高払いの方式が中心とされ、上告人の報酬は、Bの従業員の給与よりも相当高額であった。
●上告人である大工は、一般に必要な大工工具一式を自ら所有し、これらを現場に持ち込んで使用しており、上告人がBの所有する工具を借りて使用していたのは、当該工事においてのみ使用する特殊な工具が必要な場合に限られていた。
●上告人である大工は、Bの就業規則及びそれに基づく年次有給休暇や退職金制度の適用を受けず、また上告人は、国民健康保険組合の被保険者となっており、Bを事業主とする労働保険や社会保険の被保険者となっていなかった。
さらにBは、上告人の報酬について給与所得にかかる給与等として所得税の源泉徴収をする取扱いをしていなかった。
新宿労基署長事件(平成14年7月11日東京高裁)
死亡したカメラマンであるAの子であるXが、Aの死亡は業務に起因するものであるとして、新宿労基署長Yに対し て遺族補償給付の請求をしたところ、Yは労基法9条にいう労働者には該当しないとの理由で不支給処分とした。
そのため、遺族補償給付不支給処分の取消しを請求し、訴えを起こしたもの。
映画製作においては、撮影技師は、監督のイメージを把握して、自己の技量や感性に基づき、映像に具体化し、監督は、映画製作に関して最終的な責任を負うというものである。
本件映画の製作においても、レンズの選択、カメラのポジション、サイズ、アングル、被写体の写り方及び撮影方法等については、いずれも監督であるCの指示の下で行われ、亡Aが撮影したフィルム(カットの積み重ね)の中から
のカットの採否やフィルムの編集を最終的に決定するのもC監督であったことが認められる。
これらを考慮すると、本件映画に関しての最終的な決定権限はC監督にあったというべきであり、亡AとC監督との間には指揮監督関係が認められるというべきである。
亡Aの本件映画撮影業務については、亡AのBプロダクションヘの専属性は低く、Bプロの就業規則等の服務規律が適用されていない。
亡Aの本件報酬が所得申告上事業所得として申告され、Bプロも事業報酬である芸能人報酬として源泉徴収を行っていること等使用従属関係を疑わせる事情もある
しかし、他方、映画製作は監督の指揮監督の下に行われるものであり、撮影技師は監督の指示に従う義務があることは、本件映画の製作においても同様であり、高度な技術と芸術性を評価されていた亡Aといえどもその例外ではなかった。
また、報酬も労務提供期間を基準にして算定して支払われていること、個々の仕事についての諾否の自由が制約されていること、時間的・場所的拘束性が高いこと、労務提供の代替性がないこと、撮影機材はほとんどがBプロのものであること、Bプロが亡Aの本件報酬を労災保険料の算定基礎としていることなどの事実があった。
以上を総合して考えれば、亡Aは、使用者との使用従属関係の下に労務を提供していたものと認めるのが相当であり、労基法9条にいう「労働者」に当たり、労災保険法の「労働者」に該当するというべきである。
INAXメンテナンス事件(平成23年4月12日最高裁)
会社は、CE(カスタマーエンジニア)を管理し、全国の担当地域に配置を割り振って日常的な修理補修等の業務に対応させ、各CEと調整しつつその業務日及び休日を指定していた。
その実情から鑑みるに、CEは、会社の上記事業の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のために会社の組織に組み入れられていたものとみるのが相当である。
また、CEと会社との間の業務委託契約の内容は、個別の修理補修等の依頼内容をCEの側で変更する余地がなかったことも明らかであるから、会社がCEとの間の契約内容を一方的に決定していたものというべきである。
さらに、CEの報酬は、CEが会社による個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に、会社が商品や修理内容に従ってあらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に、会社が定めた方法で支払われていたのであるから、労務の提供の対価としての性質を有するものということができる。
加えて、会社から修理補修等の依頼を受けた場合、CEは業務を直ちに遂行するものとされていたこと等にも照らすと、各当事者の認識や契約の実際の運用においては、CEは、基本的に会社による個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあったものとみるのが相当である。
しかも、CEは、会社が指定した担当地域内において、会社からの依頼に係る顧客先で修理補修等の業務を行うものであり、原則として業務日の午前8時半から午後7時までは会社から発注連絡を受けることになっていた。
そのため、CEは、会社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、かつ、その業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていたものということができる。
以上の諸事情を総合考慮すれば、CEは、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。
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