ダイレクトリクルーティングとは、企業が直接求職者にアプローチする採用手法です。求人媒体や人材紹介会社に依頼して応募や紹介を待つ従来の採用手法とは異なり、企業が自ら求職者を探してアプローチする「攻め」の採用といえます。
ダイレクトリクルーティングでは、まず求職者のデータベースを保有するプラットフォーム事業者と契約します。その人材プールの中で自社の求める要件に合う人材を企業自らがスクリーニングし、スカウトを送信することで採用選考フローに進めていきます。
理想の才能発見!スカウト型採用が未来を切り開く
2021年、半導体商社の東京エレクトロンデバイスが、「キミスカ」というスカウト型採用サービスを導入し、大学の学生に対して個別に声をかけました。この新しいサービスにより、企業は自己PRを登録した13万人の学生の中からピンポイントで才能を発見できます。
新型コロナウイルスの影響で、学生との直接的なコミュニケーションが難しくなった状況下でも、企業はデータサイエンティストやシステムエンジニアなどの人材を求めています。大矢氏は、10人の学生からの返信のうち1人が内定を受けたことで、望む人材が見つかったと語りました。
スカウトサービスの成長は目覚ましく、東証マザーズに上場したアイプラグの「オファーボックス」は登録学生数が17万人を突破し、就活生の3割以上が利用しています。このようなトレンドに乗り遅れたくないとして、ブラザー工業もスカウトサービスを導入しました。
台湾の大学に留学中の女子学生は、自分の能力を評価されたと感じ、IT関連企業への就職を決めました。また、リファラル採用も増加しており、企業と学生の新たな出会いの場が生まれています。
ビジョナルの成長戦略:ビズリーチに次ぐ展開へ
ビジョナルが市場で注目を集めています。その株価は上昇し、ビズリーチなどのサービスによって純利益が飛躍的に成長しています。これまでの成功を受けて、次なるビジョナルの展望が注目されています。
ビズリーチはダイレクトリクルーティングや高いスキルを持つ求職者の呼び込みに焦点を当てています。テレビCMなどにより知名度を高め、約8000社の顧客を獲得しています。特にコロナ禍での採用抑制が和らぎ、ビズリーチの利益が増加しました。
次なる育成事業:HRMOS(ハーモス)
ビズリーチでの収益を元に、HRMOSが育成されています。HRMOSは顧客への販促が進み、利用社数も増えています。しかし、まだ黒字化には至っておらず、損益改善に向けた努力が続いています。
HRMOSの競争が激しく、クラウドでの人材管理市場における収益の伸びが他社を下回っています。また、広告宣伝費の増加により固定費負担が増えており、予想株価収益率も高水準です。このような状況下で、ビジョナルが成長期待に応えるためには、HRMOSがビズリーチのような独自性を発揮し、黒字化への道筋を示すことが必要です。
「ビズリーチ」の成功への導いた立役者が行った、営業部門の責任者として組織の改革
ビジョナルは、ビズリーチを含む人材サービスの展開で新たな成長への一歩を踏み出しています。創業者である南壮一郎社長の独創的な経営手法が、会社の業績拡大や東証マザーズ上場に大きく貢献しています。彼は、会社を強くするために適切な人材を招き入れ、積極的に権限を委譲してきました。そして、チーム経営を推進し、転職サービスの枠を超えた変革を目指しています。
ビジョナルの主力事業である「ビズリーチ」は、転職市場において従来の人材紹介からの脱却を目指すサービスです。このサービスは、求職者と企業やヘッドハンターを直接結び付ける仕組みを提供し、成功報酬型のビジネスモデルを採用しています。このダイレクトリクルーティング手法は、求人企業から高い評価を受けており、2021年時点で導入企業数は累計で1万7000社以上にのぼります。
ビズリーチの成功には、ビズリーチの社長である多田洋祐氏の貢献が大きいです。彼はビズリーチの立ち上げメンバーの一人であり、営業部門の責任者として組織の改革に取り組みました。彼のリーダーシップのもと、ビズリーチのサービス稼働率は急速に向上しました。
南壮一郎社長は、多田洋祐氏に対して、事業の権限委譲を行いましたが、その過程で意見の相違もありました。しかし、南社長は多田氏の提案を尊重し、謝罪と共にその案を採用する姿勢を示しました。このような姿勢は、ビジョナルが事業成長を遂げる上での信頼関係の構築に大きく貢献しています。
ビジョナルは、事業の成功に欠かせない優秀な人材の獲得に積極的に取り組んでいます。南社長は、自らが限界を認識し、優れた人材を集めることが事業成長に不可欠であると考えています。そのため、必要なら時間をかけてでも優れた人材を追い求めます。
南壮一郎社長の姿勢は、ビジョナルが成功に向かって進む原動力となっています。彼の経験や信念は、ビジョナルが変革を遂げる道筋を示しています。
レジュメバンクがダイレクトリクルーティング切り開く、留学生のための日本の就職市場
新型コロナウイルスの感染拡大により、2021年卒業の学生たちの就職活動は予期せぬ変化に直面しました。説明会や選考がオンライン化され、内定の取り消しも発生するなど、就活生たちは情報収集に大忙しでした。その中で、日本政府から奨学金を受ける国費留学生の支援を目指すサイト「レジュメバンク」が、この6月に立ち上がりました。
「レジュメバンク」の立ち上げ者は、文部科学省国費留学生協会(MSA)の共同創立者であり、代表も務める方です。自身もシンガポールからの国費留学生として来日し、東京大学を卒業後は複数のスタートアップ企業でエンジニアとして活躍しています。
毎年約1万人近くの国費留学生が日本で奨学金を受けており、多くは日本の上位大学で最先端の研究をしています。しかし、日本の就職活動における知識や情報が不足しているため、就職活動に関する相談が以前から寄せられていました。
「レジュメバンク」では、日本での就職を目指す国費留学生が履歴書を登録すると、MSAと提携する人材会社が求人案件を紹介する仕組みです。企業と求職者が直接やり取りする「ダイレクトリクルーティング」は、留学生採用に有効な手段と見なされています。なぜなら、「母国で就業経験がある留学生も多く、日本の就職活動の枠にはまらないから」です。
現在、約100人の留学生が登録しており、その国籍は30カ国以上に及びます。コロナ禍によるジョブ型雇用の広がりやオンライン活用の変化は、留学生にとって追い風となっています。彼らは外国人ならではの海外とのつながりを生かし、新たなチャンスを追求しています。
船井総研ホールディングス:新型コロナの影響と事業展開
船井総研ホールディングスが2020年1~6月期の連結決算を発表しました。新型コロナウイルスの影響で、対面でのセミナーや営業活動が制限され、純利益は前年同期比9%減の17億円に落ちました。旅費や交通費の削減があったものの、それを補うには至りませんでした。
売上高は1%増の122億円でした。新型コロナの影響で従来のセミナーをオンラインに切り替えるなどして対応を進めましたが、新規受注の伸び悩みがありました。一方で、ウェブ広告の運用代行や「ダイレクトリクルーティング」の支援事業では成長を見せ、増収を確保しました。
MS―Japan:専門人材への支援と新たな展望
2020年、転職者数が増加し、転職市場が活況を呈しています。この中で、特に注目すべきは高い営業利益率を誇る企業、MS―Japanです。
MS―Japanは、1990年に設立され、企業の管理部門や専門職の人材紹介に特化しています。その営業利益率は驚異的な数字であり、同業他社を大きく凌駕しています。
転職市場の活況が続く中、MS―Japanの成功の秘訣は専門人材に特化した戦略にあります。その戦略の一環として、高い紹介料率や専門職の紹介料の設定が挙げられます。
また、同社は効率的な担当者の人員配置を行い、顧客の満足度を向上させるとともに、新たな事業展開にも注力しています。その一環として、会員制交流サイト「マネジー」を通じて専門人材と企業の関係を深め、潜在的な求職需要を引き出す取り組みを行っています。
さらに、MS―Japanは「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれる新たな仕組みの導入を目指し、求職者と企業との直接交渉を支援する方針です。
これからも、MS―Japanは高収益を維持するために、転職支援に加えて新たな事業展開に取り組んでいくでしょう。その取り組みによって、顧客満足度の向上と収益性の拡大が期待されます。
エンジニアの採用戦略 ― フリーが明かす
エンジニアなどのIT人材の採用競争が激しさを増している中、クラウド会計ソフトのフリーでは、人事部門だけでなく、現場の社員も採用に参加しています。人事採用本部のリクルーティング担当、石井里佳氏によると、エンジニアの採用戦略について以下のように語ります。
採用手法は、求職者に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」が中心です。興味を持った相手に直接メッセージを送り、個別の面談を行います。面談ではエンジニアとの直接の対話を重視し、人事は同席しません。採用に関する意思決定は、部全体で行われます。特に重視しているのは、ミッションや企業文化への共感です。
企業の周知活動に力を入れ、イベントや勉強会を通じて会社の文化や価値観を伝えます。エンジニアが直面した問題や解決策をリアルに共有し、当社での働き方をイメージしてもらうよう努めています。また、新卒採用ではインターンシップを通じて学生との接点を持ち、将来のエンジニアに対しても直接アプローチします。
会社の規模を問わず、採用活動には現場の社員の協力が不可欠です。エンジニアは特に価値観や目的がはっきりしているため、採用には時間をかける必要があります。常にミスマッチを避けることを重視しています。
名刺管理サービスの提供事業者が挑むダイレクトリクルーティングによる採用支援
名刺管理サービスの提供者が、企業の採用支援に参入しています。ウォンテッドリーは名刺管理アプリの利用者向けに、スカウトメッセージの送信機能を追加しました。同様に、先行して個人向けアプリで採用サービスを開始したのがSansanです。これらのサービスは、蓄積されたデータを活用して事業を拡大しています。
ウォンテッドリーのビジネスSNSは、「ウォンテッドリー・ピープル」と「ウォンテッドリー・ビジット」という2つの機能で構成されています。新機能の「ピープルスカウト」では、有料会員企業が個人利用者にスカウトメッセージを送ることができます。利用者はアプリ上でメッセージを受け取りたいか設定し、自己紹介やスキルを入力します。これにより、個人利用者と企業をつなぐ架け橋となります。
Sansanは、個人向けの名刺管理サービス「Eight(エイト)」で採用関連サービス「エイトキャリアデザイン(ECD)」を提供しています。企業は月額料金を支払い、送信メッセージ数に応じて料金が変動します。ECDの利用者はアプリ上で転職意向を設定し、会員企業はそれを把握して効果的なアプローチを行います。
Sansanは、名刺管理サービスの売上高の大部分を占める中、個人向けサービス「エイト」に重点を置いています。エイト事業部の大西勝也氏は、「ダイレクトリクルーティングを後押しし、中途採用や転職を促進したい」と述べています。
ダイレクトリクルーティングを通じた転職変革:ビズリーチの南壮一郎社長の挑戦
2019年時点で、急速に成長を遂げるビズリーチは、テレビCMで知られる会員制転職サイトだけでなく、企業の生産性向上支援や事業承継支援サービスにも進出している。この急成長の秘訣を探るため、創業者の南壮一郎社長に話を聞いた。
南社長は、ビズリーチの成長を支える大事な要素は、事業の意義と志にあると語る。彼は事業が社会の課題解決に貢献することを重視し、新たな市場を開拓してきた。彼の視点では、人材市場も同様に課題があり、可視化や情報公開が必要だという。
転職情報の可視化やダイレクトリクルーティングを通じて、ビズリーチは企業と求職者を直接結びつけ、働き方やキャリアの選択肢を拡大している。これは、人生100年時代において、転職が当たり前の選択肢となる可能性を考慮したものだ。
また、南社長は、ビジネスチャンスとして人手不足や事業承継の問題に着目し、生産性向上や経営者不足を解決するサービスを展開している。事業承継支援サービスでは、譲渡や売却の検討をする中小企業を支援し、経営の選択肢を提供している。
ビズリーチの成長に伴い、社員数も1500人を超えたが、南社長は組織を効果的に運営するために、新旧事業を明確に区別し、世代交代を果断に行った。彼の経営哲学は、常に新しい環境に挑戦し、学び続けることにある。彼は自らが経験した師匠の影響を受け、事業の志を大切にし、常に変化し続けることを目指している。
南社長の経営哲学は、組織に新しい風を吹き込み、若手の育成に期待が寄せられている。彼の異色の経歴と視点は、ビジネス界に新しい風をもたらしており、その活躍から多くの学びを得ることができるだろう。
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