多くの人が働いている会社とはどのような存在だろうか。 企業活動や企業組織について、社会人なら常識として知ってほしいい基本的な知識を解説しよう。
経営・組織論
企業において、多種多様な業務を担っている多くの社員が全員で一つの方向に仕事を進めるためには、共通する理念が必要です。
そこで多くの企業では、「経営理念(企業理念)」を掲げて企業活動を行っています。
「経営理念(企業理念)」とは、企業の社会的役割、責任、行動指針などを簡潔な文章やシンボルで表現したものです。
企業が何を為すために存在しているのかを表すものでもあり、経営哲学やビジョンともよばれます。
企業を取り巻く環境は日々めまぐるしく変化しています。そうした変化に対応しつつ、「経営理念(企業理念)」に基づいた長期的視野に立った経営をすることが大切です。
また、企業活動には、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会など、様々な「ステークホルダ(利害関係者)」が関わっていて、その「ステークホルダ」との信頼関係をどのように築いていくかが、企業活動における重要な課題となっています。
「ステークホルダ」との関係構築のためには、「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」を果たしていかなくてはなりません。
CSRを果たすための取組として、健全な経営を実行するための企業統治(コーポレートガバナンス)のあり方を決めたり、投資家向け広報(IR:Investor Relations)活動として情報を開示したりします。
この情報開示のことを「ディスクロージャ」とよび、「ステークホルダ」が経営の監視を行える状況を作り出し、結果として企業価値を維持していくことに繋がるのです。
また、顧客の好感や愛顧の獲得を目指すコーポレートアイデンティティ(CI)などの取組も必要となります。
環境に配慮した省電力のIT製品やITインフラストラクチャを整備するグリーンITの取組で、コーポレートアイデンティティ(CI)を強化できるでしょう。
その他企業のブランド(コーポレートブランド)を構築して企業全体のイメージや価値を高めるコーポレートブランディングや、企業の特徴を示す広告などを通したコーポレートアイデンティティ(CI)も重要です。
◎ 社会的責任投資(SRI:Socially Responsible Investment):企業財務などによる従来の投資基準に加えて、ステークホルダや環境に配慮した企業の社会的責任(CSR)への取組みを投資基準とする投資手法。
◎ SDGs(Sustainable Development Goals):「持続可能な開発目標」と訳される。2030年までに「地球上の誰一人として取り残さない」社会の実現を目指すという国際目標。17 のゴール(目標)と169のターゲットで構成される。
株式会社を司る機関
企業の中で最も一般的な株式会社を例に、企業の組織を見てみましょう。株式会社の最高意思決定機関は、「株主総会」です。
株主総会の構成員は、会社の株式を保有する「株主」です。株主は、その保有する一株ごとに1票の議決権をもちます。
株主総会では、取締役・監査役の選任・解任、決算報告とその承認、役員の報酬決定、会社の解散・合併・分割など、経営の重要事項を決議するのです。
株主総会で選出された「取締役」は、会社の業務執行を行います。ただし「取締役会」の設置された株式会社では、取締役会が業務執行についての決定を行い、対外的な業務執行の責任者は「代表取締役」となります。
「監査役」は、これらの業務執行が健全に行われているかをチェック。これを監査といいます。
日本の株式会社では、経営の最高責任者は代表取締役などです。
近年、株主総会によって選任されて企業を管理監督・経営する取締役と、企業における業務遂行を司る執行役を分離した執行役員制度を導入する企業も増えています。
執行役員は、法的定義のある取締役とは異なり、会社の業務執行に対する責任と権限を持つ役員として「代表取締役の指揮命令下にある会社使用人」と位置付けられているのです。
企業は、ヒト・モノ・カネ・情報という4つの経営資源を利用して企業活動を行っています。
企業経営を効果的に行うためには、これらの資源をいかに適切に管理するかが重要です。
「ヒト」とは、社員(人材)のことであり、研修等で人材力を強化することが、経営の成功に結び付きます。
「モノ」とは、製品や商品のことをさします。製造業であれば、生産設備なども「モノ」にあたります。
その他の業種でも、企業活動のために使用するコンピュータやプリンタ、電話機等も事業には不可欠な「モノ」でしょう。
「カネ」とは、資金のことで、ものを買うにも人を採用するためにも「カネ」は必要です。
「情報」とは、経営判断をスムーズに行うための資料やデータです。現在の企業経営にはなくてはならないもので、「情報」をうまく活用することで、生産性の向上だけでなく、事業計画の立案などにも役立てることができます。
人的資源管理
それでは、経営管理上もっとも重要な「ヒト:人的資源管理(HRM:Human Resource Management)」について、もう少し詳しくみてみましょう。
従業員の業務能力を向上させ、経営理念を浸透させることは、企業目的の達成のために重要なことです。
人材活用においては、ダイバーシティといわれる、国籍や性別などの違いを問わず、多様な人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメントが主流となっています。
HRテック(HRTech:Human Resources Technology)は、ビッグデータ解析や人工知能(AI)などの最先端テクノロジーを活用し、人事課題の改善を行う取り組みや、人材一人ひとりの、経歴やスキルなどを管理します。
HRテック(HRTech:Human Resources Technology)では、リーダーシップを持っている人材については指導力や統率力を発揮できる役職に登用するなど、適材適所で人材を活用する人事管理手法(タレントマネジメント)が行われています。
人材を開発するための手段として、職場内で実際の業務を通じて業務能力の向上を図る「OJT(On the Job Training)」や、日常業務を離れ専門家などを招いて行われる能力開発研修の「Off-JT(Off the Job Training)」、自己啓発の「SD(Self-Development)」があります。
また人事制度としては、戦略的な研修や配属によって計画的に業務能力を高めていく「キャリア開発プログラム(CDP:Career Development Program)」や、業務上の目標を定め、目標の達成度で人事上の評価を行う「目標による管理(MBO:Managementby Objectives)」などが行われているのです。
人材を育成する教育方法としては、PCとネットを利用した「e-ラーニング」が普及してきています。e-ラーニングは、これまでの集合研修で問題となっていた時間や場所の制約がなく、教材にアクセスさえできれば、好きな場所・好きな時間に学習することを可能にしました。
また能力や進捗度・習熟度に合わせて、一人ひとりに最適化された学習内容を提供する「アダプティラーニング(適応学習)」も注目されています。
その他には、一対一のコミュニケーションによる対話で行う人材育成方法としては「メンタリング」や「コーチング」があり、個人の自発的な成長を促しているのです。
またヒューマンリソースマネジメントとして、企業は従業員の仕事に対するやる気「モチベーション」を高く維持することが必要です。
「ワークエンゲージメント」はモチベーションを測る概念で、ワークエンゲージメントが高い状態とは、仕事に対して感じている充実感や就業意欲が高い状態を表します。
最近では、仕事と家庭生活とのバランスを考えた働き方を実現する「ワークライフバランス」や、社員の「メンタルヘルス」を組織的にケアすることも、ヒューマンリソースマネジメントの一環として求められています。
「ワークライフバランス」とは、仕事と私生活の調和のことです。
仕事だけの生活ではなく、仕事と私生活のバランスのとれた多種多様な生き方をするという考え方です。
「メンタルヘルス」とは、仕事や職場での生活環境において、強い不安や悩み・ストレスを抱える人の心の健康管理をすることです。
雇用する企業としても、社会的責任を果たすうえで、社員のメンタルヘルスについて、組織的、計画的に取り組んでいく必要があります。
◎リテンション:「維持、保持」の意味で、人事領域とマーケティング領域で使われます。人事領域で使われる場合は、「人材の維持」という意味で、優秀な社員の離職防止策のことです。マーケティング領域で使われる場合は、「既存顧客の維持」という意味でその施策について使われます。
経営管理
経営理念をより具体化したものが「経営目標」です。
企業は「経営目標」達成のために経営資源を管理し、そのことを「経営管理」といいます。
経営管理のスタンダードな考え方が「PDCA」サイクルです。
これは、Plan-Do-Check-Actという4つの螺旋状のプロセスを繰り返すことによって、品質の維持向上および継続的な業務改善活動を推進するマネジメント手法です。
◎Plan:目標を設定してそれを実現するための計画を立てる。 ◎Do:計画を実施しそのパフォーマンスを測定する。 ◎Check:測定結果を評価し結果を目標と比較するなど分析を行う。 ◎Act:プロセスの継続的改善、向上に必要な処置を行う。
他にリスクに対する備えとして「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」や「BCM(Business Continuity Management:事業継続管理)」を取り入れる企業も増えています。
「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」とは、台風や震災等の大規模災害や不測の事態が発生しても、最低限の企業活動を続けたり、目標時間内に事業活動を復活させるための行動計画です。
また「BCM (Business Continuity Management:事業継続管理)」とは、BCPの作成から、運用および機能を検査して不備を改善する一連のサイクルのことをいいます。
なおリスクの洗い出しから対応策の検討までの(リスク特定、リスク分析、リスク評価)をリスクアセスメントというのです。
「OODA(ウーダ)」ループ
PDCA に替わる新たなビジネスメソッドとして、「OODA(ウーダ)」ループが注目されています。
Observe(観察)、Orient(方針決定)、Decide(意思決定)、Act(行動)からなり、軍事行動における指揮官の意思決定方法から広まったメソッドです。
現状を観察し、最善の判断を行い、即座に行動を起こすこのサイクルを素早く繰り返すことで、より優位な立場でビジネスを進めることができます。
組織経営
ある一定の目標達成のために、2人以上の人々が協働する集合体を「組織」といいます。
組織には、目的や会則などが明確となっている「公式組織」と、それらは明確でないが暗黙の目的をもっている「非公式組織」があります。
企業は「経営目標」達成のために効率的に業務を行えるよう、表のような様々な組織をつくっています。
例えば会社の中には「持株会社(ホールディングス)」という組織があります。
これは他の会社の株式を所有することで事業活動を自社の管理下に置き、その会社を実質的に支配することを目的として設立された会社です。
業務分析
業務を分析し、業務改善や業務計画を行うために使われる表やグラフを紹介します。
グラフには、量の大小を比較する「棒グラフ」、時系列による増減を見る「折れ線グラフ」、内訳構成比を把握できる「円グラフ」、「複合グラフ」といって棒グラフと折れ線グラフのように2つのグラフを重ねて関係を見るグラフ等があります。
「2軸グラフ」は、複合グラフで2つのグラフの単位が大きく異なる際に、一方は棒グラフの軸、他方は折れ線グラフの軸のようにして表したグラフのことです。
パレート図
パレート図は、集計データの多い順にならべた棒グラフと、そのデータの全体における累積比率を表した折れ線グラフとを組み合わせたものです。
これにより「重点的に管理すべき項目は何か」が表現されます。
「ABC分析」はパレート図を使った分析法です。
ABC分析では、売上の合計を求め、その売上げ合計額に対する各商品の売上金額の構成比率を求めます。
各商品の構成比率を高い順に足していき、その合計値(累計比率)が70%までを「A」、70%~90%を「B」、90%より上を「C」とします。
売上の70%を占める「A」ランクの商品は最重要項目となり、主力商品として常に在庫を管理する必要があるのです。
また「C」となった商品は、商品の入れ替えを検討する対象となります。
これにより特に重点管理すべき要素が明確になるのです。
特性要因図
「特性要因図」は図の形が魚の骨にも見えることから「フィッシュボーンチャート」ともよばれ、ある問題(特性)の起こった原因(要因)を系統立てて整理するのに適しています。
散布図
散布図とは、2つの項目の関連性を点の分布で表すグラフです。
例えば「気温」と「ある商品の売上」といった2つの属性を持つデータを、グラフの縦軸と横軸に値をとっていくことにより、2種類のデータがどのような関係を有するかを表すことができます。
値の配置状況が右上がりの直線で示される場合は「正の相関」、右下がりの場合には「負の相関」を有すると言います。
ある属性の値が変化すると別の属性の値が変化するという関係にある場合、この場合の2種類のデータは相関関係にあるのです。
例えば気温が上がるとある商品の売上が上がる、あるいは気温が上がるとある商品の売上が下がるといったような分析をすることができます。
他方、値の配置がバラバラで直線で表せない場合は、2種類のデータは「無相関」と分析できるのです。
2種類のデータが原因と結果の関係にある場合は、因果関係にあるといいます。
疑似相関とは、2種類のデータに相関関係がないのに、見えない要因の存在であたかも相関関係があるように見える現象のことです。
同様に2つの項目の関係性を表す行列としては、2項目間の相関係数を行列で表した「相関係数行列」や、2項目間の散布図を行と列に対応させて並べて描画した「散布図行列」があります。
回帰分析
例えば「気温」と「ある商品の売上」といった2種類のデータ間に相関関係があるときを考えます。
その一方のデータから他方のデータを推定する方程式を求めることで、一定の気温の場合における特定商品の売上予測を求めることが可能になります。
このような散布図の考え方を応用し、2つのデータ間にある相関関係を基に、一方のデータからもう一方のデータを予測する分析手法が「回帰分析」です。
データ利活用
明確な意図を持って収集された「調査データ」、実験を行って得られた「実験データ」など、データは分類の方法で様々な種類があります。
コンピュータや通信機器が一定の処理を実行したことを記録したデータを「ログデータ」といいますが、ログデータにも、幾つか種類があるのです。
例えば、交通系IC カードや通信事業者の基地局データから人々の行動を分析する「人の行動ログデータ」や、製品の品質向上や、製造業の分析業務の効率化に利用される「機械の稼働ログデータ」があります。
その他には、数値として測定することができるデータか否かで分類する「量的データ」「質的データ」、
誰が収集したデータかで分類する「1 次データ」「2 次データ」、
構造化されているか否かで分類する「構造化データ」「非構造化データ」、さらに「メタデータ」や「時系列データ」があります。
調査を行う際の、調査対象全体のことを母集団といい、母集団を全て調査することは「全数調査」といいます。
国勢調査の方法は全数調査にあたります。
アンケート調査など、通常調査を行う場合は、ある条件下で対象を抽出しますが、これを「標本抽出(サンプリング)」といい、選ばれた対象を「標本(サンプル)」というのです。
抽出の方法は、画面の表のような手法があります。
◎A/B テスト:Webマーケティングで使われている手法の一つで、例えばWeb広告において、広告の文章やデザインを変えてランダムに表示し、クリックはどちらが多いかを検証する際に使われます。
データウェアハウス
「データウェアハウス」とは、銀行の勘定系システムや、座席予約、販売管理などの基幹系業務で処理され、蓄積されたデータを検索処理用に別途保管し、利用しやすいようにした時系列データのことを指します。
データウェアハウスに蓄積されたデータは主に、マーケティングや経営シミュレーションなど、企業の経営判断で利用されます。
データの分析は「BI(Business Intelligence)ツール」を用いて行うのです。
BIツールにはOLAP(Online Analytical Processing)という分析機能があり、表計算ソフトなどでは対応できないような大量なデータを集計、分析することができます。
さらに加えてBIツールの機能では、分析だけでなく分析結果によるレポートの作成やデータの配信なども行えます。
コンピュータの処理速度向上やIoTにより、従来のデータベース管理システムでは処理が困難なほど多種多様な形式の大量なデータが収集されるようになりました。
このようなデータを「ビッグデータ」とよびます。
データマイニング
データは集めただけでは意味がありません。
分析を行ってデータの規則性や関連性を導きだすことが必要です。
このように数学的な手法を使って分析し、有益となる法則を見つけ出すことを「データマイニング」といいます。
例えば、大量のテキストデータから有益な情報を取り出す技術が「テキストマイニング」です。
またデータの分析を行う専門分野のことを「データサイエンス」といいます。
データサイエンスを活用して業務を進める際は、以下の「データサイエンスのサイクル」と呼ばれるプロセスを繰り返します。
①問題解決のための課題の設定、②調査方法の計画、③データ収集、④データ分析、⑤分析結果から結果の共有と課題解決
そしてデータサイエンスの研究者や技術者が「データサイエンティスト」です。
シミュレーション
模擬的に現実に近い状況を作り出して実験することにより、問題点を明らかにすることができます。これを「シミュレーション」といいます。
このシミュレーションを行う手法のひとつに、「待ち行列理論」があります。
これは、例えば窓口業務における顧客の待ち時間を、平均サービス時間や窓口の数、単位時間あたりに訪れる顧客の数により導き出す数理モデルです。
こうした待ち時間の他にも行列の長さを分析したり、仕入れ個数の検討などに応用されたりしています。
シミュレーションで得た値を実際の観測データとつきあわせて、シミュレーションの確かさを高めることを「データ同化」といいます。
他に意思決定を行う際の手法の例としては、与えられた情報について分類を行ったり(「グルーピング」)、与えられた情報を解析して変化の規則性を見つけ(「パターン発見」)、将来の状況について予測を行い、リスク低減(最適化)を図るといったものがあげられます。
デシジョンツリー
意思決定を行う際に用いるツールとしては、次のようなものがあります。
◎ デシジョンツリー:選択肢を階層化し樹形図で表したものです。「決定木」ともいいます。
◎ デシジョンテーブル:ある条件を設定して処理との関係をまとめた表のことです。
複数の条件の組合せから問題を発見したり、行動を決定したりするのに利用し、「決定表」ともいいます。
在庫管理
在庫管理の発注方式には、定量発注方式と定期発注方式の2つの種類があります。
「定量発注方式」は、発注する量を定めておき、発注する時期は在庫量に従って検討する方式です。
予め発注のタイミングとなる在庫量(発注点という)を定め、在庫が発注点を下回ったときに決まった量を発注します。
発注から入庫までの期間を「納入リードタイム」といいます。
「安全在庫量」とは、需要の変動を見越して欠品を防ぐために確保している在庫量のことです。
一方の「定期発注方式」は、予め発注する間隔を定め、その都度発注量を検討する方式です。
適切な発注量を求めるためには、正確な需要予測が必要となります。
定量発注方式において、在庫の維持と補充に関わる「在庫維持費用」と「発注費用」を最小限に抑え、最適となるよう計算された発注量が「経済的発注量」です。
経済的発注量を管理することで、少ない費用で適切な在庫を維持することができ、利益の確保が図れます。
資産管理と与信管理
資産とは、企業が保有する設備や在庫などのことです。
ここでは資産管理の手法として、減価償却、在庫評価、与信管理について学びます。
設備などの固定資産が、時間を経過するに従い資産価値の下がることを、減価といいます。
<減価償却>
減価を毎年決まった方法で計算し、期間で分割して費用とすることを「減価償却」というのです。
減価償却の方法には2つの方法があります。
◎ 定額法:毎期一定額を減価償却する方法。
◎ 定率法:未償却の金額から毎期一定の割合で減価償却する方法。
<在庫評価>
在庫評価額を計算する方法には、次のようなものがあります。
◎ 先入先出法:早く入庫された商品から先に出庫されたとみなす。
◎ 後入先出法:新しく入庫された商品から先に出庫されたとみなす。
◎ 平均原価法:入庫された商品の平均原価による。
◎ 個別原価法:個々の取引原価による。
算出方法が違うため、在庫評価額はそれぞれ異なります。
<与信管理>
企業活動は、仕入れや販売など取引先との信用において成立しています。
たとえば商品の取引を売掛とした場合、取引先が倒産したら代金が回収できないというリスクを負うことになります。
与信管理とは、そのようなリスクを減らすために取引先の経営状況を評価し、「取引の可否」と「取引の規模」について管理することです。
問題解決法
問題を解決するために用いる手法としては、次のようなものがあります。
ブレーンストーミング |
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KJ法(親和図法) |
バズセッション |
ルールに従ってあるテーマに関する意見を出し合う手法です。 ルールとしては「人の意見を批判しない」「質より量をめざす」「既成概念や固定概念に囚われない自由奔放なアイディアを歓迎する」「結合や便乗を歓迎する」を守る必要があります。
これによって出された多種多様なアイディアの中から、問題解決に役立つアイディアを発見していくのです。
参加メンバの中には「自分のアイディアなんて・・・」とか「こんな意見は適当ではない」などと考える人もいます。
また参加者の中、上司や専門家がいるだけで、委縮して意見を言わなくなってしまう人もいるでしょう。
そのようなことが起こらないよう、メンバ構成を検討することや、まずは参加者にブレーンストーミングというものを理解してもらうことが重要となります。
◎KJ法(親和図法):
ブレーンストーミングなどを行い、参加者のアイディアが出尽くしたら意見をカード化し、類似したグループ毎にまとめます。
そうしたグループ化を繰り返し行うことにより、グループ間の構造を検討することで問題の大局をつかむ手法です。
まとまったグループには表札をつけ、問題や要因を図解化及び文書化して整理することも有効です。
東京工業大学の川喜田二郎氏によって考案されたもので、名前の頭文字をとってKJ法といいます。
◎バズセッション:
まず参加者を数人程度の小規模なグループに分け、リーダと記録係を決めます。 次にグループごとに討議し、そのグループで出された結論を持ち寄って全体の結論を導く手法です。
会計・財務
企業の経営者は、常に「売上」や「利益」を意識しながら経営活動を行っています。
日々の取引に関しては、企業会計原則にしたがって、仕訳帳や総勘定元帳を使用して整理・記入するのです。
仕訳帳や総勘定元帳に記載された金額をもとに、会計期間の区切り(通常年1回)で「財務諸表」を作成します。これを決算といいます。
「財務諸表」とは、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」のことです。
「貸借対照表」とは、企業のある時点での財務状態を表すもので、バランスシートとも呼ばれます。
貸借対照表には、会社にとって価値のある財産や、いずれ回収できる見込みの債権を「資産」として表し、借入金などのいずれ返済しなくてはならない債務を「負債」として表します。
「損益計算書」とは、企業の一定期間の「収益」と「費用」を表し、一定期間の経営成績を明らかにします。
「キャッシュフロー計算書」は、現金や現金同等物である資金の増減、つまり収入と支出の状況を表示した計算書です。損益計算書とは別の観点から、企業の資金状況を管理する資料です。
会社は「財務諸表」を作成し、株主や銀行、取引先などに財務状況を報告します。
売上と利益の関係
利益を出すことが企業活動の基本です。少ない「費用」で最大限の「利益」を得ることを、経営者は常に目指しています。商品の売り上げに際し、もらえる金銭を「売上高(収益)」、商品の仕入れにかかる金銭を「費用」といいます。
「費用」には、「売上原価」となる商品の材料費や、「販売費および一般管理費」にあたる給与、保険料、商品の発送費等があります。
「売上総利益(粗利)」とは、売上高(収益)から売上原価を引いたものをいい、「営業利益」とは、売上総利益から、給与や保険料などの「販売費および一般管理費」を引いたものをいいます。これが本業による利益です。
損益分岐点
企業が経営を存続させるためには、利益を出すことが重要です。そこで、製品がどれくらい売れた時に利益が出るか把握するため、売上と費用の関係をグラフにします。
売上と費用が等しく、利益・損失とも「0」となる点が「損益分岐点」です。
つまり、グラフにおいて損益分岐点となる売上高を挟んだ左側が赤字、右側が黒字ということになります。
貸借対照表
貸借対照表は図のように、 左側に「資産」、右側に「負債」と「純資産」を整理します。また左側と右側の合計は必ず同じになります。
バランスシートともよばれ、「資産」「負債」「純資産」のバランスをチェックするのです。
資産のおもな勘定項目は
◎流動資産:現金や比較的短期間で現金化できる資産(預金、受取手形、売掛金、短期有価証券など)
◎固定資産:継続的に使用する資産(有形固定資産:土地・建物・機械など、無形固定資産:著作権・特許権など)
◎繰延資産:支出の効果が来期以降も見込まれる資産(開業費、開発費など)
負債のおもな勘定項目は
◎ 流動負債:比較的短期間で支払期限がくる負債(支払手形、買掛金、未払金、短期借入金など)
◎ 固定負債:支払期限が長期間の負債(社債、長期借入金、退職給与引当金など)
損益計算書
損益計算書は、文字通り「損益」について明確にした表です。
費用と利益を示すことで、一定期間の経営成績を知ることができます。
利益については、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益といった種類があり、企業のどのような活動から利益が出たか(あるいは損失を被ったか)を分析することができます。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、企業の一定期間の現金収支(キャッシュフロー)を記した計算書です。
営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの三つの活動区分にわけて表されます。
財務指標を使った分析
貸借対照表の科目を使った企業の経営分析の例を、2つ紹介します。
「自己資本比率」とは、会社の持っている価値(総資本)のうち、自分のお金(自己資本)の割合を示す指標です。
企業の健全性を見る指標として使われます。自己資本比率が50%を超えていると、負債をすぐに返す能力があるとみなされます。
「流動比率」とは、短期的な資金繰りについての指標です。
流動資産を流動負債で割るので、値が小さいと自転車操業であることがわかります。
さらに損益計算書と貸借対照表の科目を使った経営分析の例として、収益性の指標を2つ紹介します。
「ROA(Return On Assets):総資本利益率」とは、すべての資本からどのくらい利益をだしているかの指標です。
損益計算書の経常利益(あるいは当期純利益)を貸借対照表の総資本で割ります。
「ROE(Return On Equity):自己資本利益率」とは、自己資本からどのくらい利益をだしているかの指標です。
損益計算書の当期純利益を貸借対照表の自己資本で割ります。
ROE は、投資に対してどのくらいのリターンが期待できるかの指標にもなります。