アルムナイ採用で人材不足解消!アルムナイ採用で退職者を再雇用し即戦力化する新しい動き

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近年、企業や行政機関において「アルムナイ採用」と呼ばれる、退職者を再び雇用する動きが広がっています。これは、自己都合で退職した元社員や元職員を、即戦力として再び迎え入れる新しい人材戦略です。

人材不足が深刻化する中、企業は新たなスキルや外部の視点を持った元社員を再雇用することで、即戦力として活用できる点に大きなメリットを見出しています。

マツダや武蔵野銀行、四国電力など、多くの企業がアルムナイ採用を正式に制度化し、人材確保に積極的に取り組んでいます。

また、霞が関でも若手官僚の離職が問題視されており、官民をつなぐ「リボルバー官僚」として再び復帰する元官僚が増加中です。

こうした動きは、退職者が培ったスキルや知識を組織に還元し、企業や行政の発展に寄与する可能性を広げています。地元に恩返ししたいという元社員の思いと、組織の成長を支えるアルムナイ採用は、今後さらに拡大していくでしょう。



コンテンツ

アルムナイ採用とは?退職者を再び企業が即戦力として雇用する新しい動き


最近、退職した社員を再び企業が雇用する「アルムナイ採用」が注目を集めています。「アルムナイ」とは、もともと「卒業生・同窓生」を意味する英単語「alumnus」の複数形で、転職希望者が増加し、深刻化する人手不足を背景に、企業は退職者との関係を重視するようになってきました。

この制度のメリットは、退職者が企業の文化や業務の進め方を既に理解しているため、即戦力として期待できる点です。また、退職後に新たなスキルを習得し、外部からの視点で会社の強みや課題を客観的に把握できることも利点です。正社員としての再雇用だけでなく、副業や業務委託の形での採用も進んでおり、働く人にとってもキャリアの選択肢が広がるでしょう。

企業が退職者との関係を保つために行うのは、定期的なイベントの開催や社内報の送付です。また、退職者の意向を確認し、再雇用を検討するためのオンラインサービスを活用して、ネットワークを構築するケースも増えています。

ただし、アルムナイ採用には課題もあります。現職の社員の士気が低下する可能性や、企業に不満があって退職した場合、再雇用が難しいことも考えられます。リクルートの津田郁氏は「従来の雇用に固執せず、企業と従業員の関係性を柔軟に見直すことが必要だ」と指摘しています。



国家公務員のイメージ改善に注力:人事院・川本総裁が健康・ハラスメント対策を強化


人事院総裁の川本裕子氏(66歳)は、就任4年目を迎えるにあたり、国家公務員のイメージ改善に注力する考えを示しました。若者の間で実態以上にマイナスイメージが広がり、国家公務員を敬遠する傾向が強まっていることに懸念を表明しました。そのため、健康やハラスメント対策に重点を置き、職業の魅力を再び伝える取り組みを進める意向です。

川本氏は、「国家の屋台骨を支える唯一無二の仕事でありながら、その魅力が十分に伝わっていない」と指摘しました。「以前は広報活動をしなくても優秀な人材が自然と集まっていたため、少し油断していた部分がある」と反省の意を示しています。

また、国会対応が重い負担となっている現状について、「行政の努力だけでは解決が難しい部分もあります。実態を把握するためにアンケート調査などでエビデンスを集め続けたい」と述べました。

さらに、若者の意識が変化し、「転職が前提となっている」と語り、新卒採用だけでなく、経験者採用や退職者を再雇用する「アルムナイ採用」を重視する考えを明らかにしました。

実際、国家公務員の総合職採用試験の申込者数は2012年度の2万5110人から減少傾向にあり、2021年度には1万7411人と約10年で約3割減少しています。また、採用から10年未満で退職する若手職員の数も2018年度には116人に上り、その後も高い水準が続いています。

このような状況を受け、川本氏は国家公務員の魅力を再発見し、若者に伝えることの重要性を強調しています。健康やハラスメント対策を強化し、働きやすい環境を整えることで、優秀な人材の確保につなげたい考えです。



地元に恩返し!元社員の復帰で広がるアルムナイ採用の可能性


企業が自己都合で退職した元社員を再び雇用する「アルムナイ採用」が、近年大きな注目を集めています。各社が優秀な人材確保に力を入れる中、既に企業文化を理解している即戦力の復帰は非常に心強いものです。地元企業に恩返ししたいという思いで、成長を遂げた社員が再び戻るケースも増えています。

全国で飲食店を展開するDDグループは、2023年にアルムナイ採用を導入し、かつて働いていた6人を再雇用しました。彼らが退職した背景には、新型コロナウイルスの影響で飲食業界が打撃を受けたことや、家庭の事情がありましたが、状況が落ち着けば再び働きたいという意欲があったのです。

企業にとっても、社内の風土を熟知している元社員は大変貴重な存在です。DDグループの採用担当者、鹿熊光さんは「人手不足が進む中で、意欲ある人材のカムバックは大きな期待を寄せています」と語ります。これまでも、個人的なつながりを活かして元社員が復帰する例はありましたが、退職者側には「退職した負い目」を感じて申し出をためらうことも多かったといいます。そこで、会社が積極的に退職者との接点を保ち、復帰しやすい環境を整えることが重要だと鹿熊さんは指摘します。

DDグループは、リクルートが提供するアルムナイ採用支援サービス「アルミー」を導入しています。このサービスは、退職者の情報を一元管理し、元社員が企業からの情報提供を受け取ったり、再雇用を希望する際の窓口として機能します。リクルートが行った調査によれば、アルムナイ採用を導入している企業は全体の12%にすぎませんが、導入企業は採用した人材の質や数に対する満足度が高いことが明らかになっています。

こうした流れは、地元企業との再結びつきにもつながっています。例えば、北海道釧路市出身で現在はシステム開発会社ジョイゾーの副社長を務める四宮琴絵さんは、2023年に釧路製作所の業務デジタル化アドバイザーとして25年ぶりに同社に復帰しました。四宮さんは1995年に釧路製作所で事務員としてキャリアをスタートし、その後、東京で技術職としての腕を磨きました。長年続けてきた交流が縁となり、今では釧路製作所の成長をサポートする重要な役割を担っています。「育ててくれた職場と地元に恩返しがしたい」という思いが、彼女の復帰を決める大きな要因となったのです。



マツダ、元社員再雇用の「アルムナイ採用」を制度化!人材獲得競争に対応


マツダは2024年度から、退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」を本格的に開始します。人材獲得競争が激化する中、即戦力としての活躍が期待できるだけでなく、社外で得た知識や経験を社内で活かしてもらう狙いがあります。

「アルムナイ」とは英語で「卒業生」や「同窓生」を意味し、社風や業務の進め方を理解している点が強みとされています。マツダはここ数年、個別の相談に応じて数名を採用してきましたが、2024年4月から正式な制度として導入することを決定しました。人事部門を統括する竹内都美子執行役員は、「復帰後の意欲や士気が非常に高まっています」と語っています。

自動車業界では、電動化や自動運転などの先端技術の開発競争が進む一方で、車体やエンジンに関する専門知識を持つ人材も依然として必要とされています。そのため、マツダは2024年4月に人事制度を大幅に刷新します。人事改革推進部を新設し、研修や昇給、評価の仕組みを見直す方針で、アルムナイ採用はその一環となります。また、デジタル分野を中心に、高度な専門性を持つ人材には高額な報酬を提示することも検討中とのことです。

アルムナイ採用はさまざまな業種で広がりを見せており、自動車業界ではトヨタ自動車も2022年3月に導入しています。マツダもこの流れに乗り、即戦力となる人材の確保と企業の活性化を目指しています。



武蔵野銀行が新制度を導入:アルムナイ採用とリファラル採用で多様な人材を確保


武蔵野銀行は、経験豊富な人材の採用を強化するため、2024年2月から新たな制度を導入しました。退職した元行員を再雇用する「アルムナイ採用」と、現行員に知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」を開始します。人材の流動化が進む中、多様な人材の確保を目指しています。

「アルムナイ」とは英語で「卒業生」や「同窓生」を意味し、退職後に得た経験や資格を活かし、即戦力として再び活躍してもらうことを期待しています。同銀行では2008年から、子育てや介護などの理由で退職した元行員を再雇用してきましたが、「在職4年以上で退職から10年以内」という条件がありました。新たなアルムナイ採用では、これらの条件を撤廃します。

一方、「リファラル」は英語で「紹介」や「推薦」を意味し、行員からの紹介を通じて入行希望者を採用します。企業文化や仕事のやりがいを現行員が直接伝えることで、社風に合った人材の確保や入社後のミスマッチを防ぐ狙いがあります。

武蔵野銀行は「より幅広く高度な人材を確保するため、今後も中途採用を拡大していきます」と述べており、多様な人材の採用に積極的に取り組んでいく姿勢を示しています。



若手離職者を呼び戻す!霞が関で広がるアルムナイネットワークと中途採用強化


「アルムナイ(卒業生)」という言葉が霞が関にも広がりつつあります。中途退職した元官僚たちを対象としたネットワーク作りが始まり、これにより官民を自由に行き来する人材の流動性を高めようという動きが進んでいます。若手官僚の離職が深刻化し、中途採用の門戸が広がる中、外で得た知識やスキルを再び国に還元しようという「新しい公共」の形が模索されています。

経済産業省のOBである栫井誠一郎さんのもとに、2021年冬、「リボルビング(再雇用)でいい人材はいないか?」という問い合わせがありました。栫井さんは、すぐさま中途採用情報を退職者向けのフェイスブックグループに投稿し、100人を超える参加者から多くの反応を得ました。また、経産省の幹部は退職者との交流会で「外で得た知識を国に還元してほしい」と呼びかけ、元官僚たちの復帰を促す非公式な集まりも続けられています。

栫井さん自身も2011年に退職後、軽い気持ちでOB・OG会を立ち上げました。最初は同窓会のような飲み会が中心でしたが、今では退職者と経産省をつなぐ「アルムナイ・ネットワーク」として機能しています。「たとえ退職しても、日本を良くしたいという思いは変わらない」と栫井さんは語り、こうした交流の場では経済政策や成長戦略についての議論が行われることも少なくありません。

このような退職者ネットワークは、企業や他省庁にも広がりを見せています。特にアメリカでは、退職者を再雇用する「アルムナイ制度」が一般的で、組織的に退職者と交流を続け、外で経験を積んだ人材を再び迎え入れる動きが進んでいます。日本でも、トヨタやみずほフィナンシャルグループなどがこのネットワークを活用し始めています。

霞が関でも、総務省や財務省など複数の省庁でOB会が結成されており、今では省庁横断の交流会も開かれています。栫井さんは「今はまだ飲み会中心だが、これがきっかけとなり、霞が関に戻る人が増えていくだろう」と期待を寄せています。

しかし、復帰には課題も残っています。各省庁は中途採用を強化していますが、官僚の世界は年功序列が根強く、退職者が再雇用されても以前の同期より低い役職に就くことが多いのです。民間で得たスキルや経験が十分に評価されず、再び霞が関に戻っても新しい提案がなかなか受け入れられないこともあります。

金融庁の堀本善雄さんは、こうした問題を指摘し、「中途採用者を適切に評価しないのであれば、そもそも採用する意味がない」と訴えます。また、霞が関の内外を知る者同士がキャリアを循環させることで、より柔軟で効率的な組織が作られる可能性があると強調しています。

霞が関の中でも、このような状況を変えようという動きが進んでいます。2022年には「ソトナカプロジェクト」という中途採用者のグループが人事院に改革を提言し、退職者や内定辞退者を活用したデータベースの構築や、公募制による昇進制度の導入などが提案されました。これにより、官と民の壁が取り払われれば、より優秀な人材が霞が関に戻りやすくなるでしょう。



官民をつなぐリボルバー官僚の挑戦!霞が関改革と中途採用の未来


霞が関では近年、若手や中堅官僚の退職が相次ぎ、各省庁が中途採用を強化しています。特に幹部候補の30代の中堅官僚が減少しており、組織全体の年齢構成にゆがみが生じています。ある課長補佐は「法律を作るには5年から10年の経験が必要。中途採用者が優秀でも、即戦力にはなりにくい」と危機感を抱いています。

一方、霞が関独特の文化や仕事の進め方を知る「アルムナイ」は、即戦力として期待されています。経済産業省の採用担当者は「外の世界と中の世界を知っているため、客観的な提案ができる」と述べていますが、実際に復帰する官僚の数はまだ少なく、復帰後のキャリアパスには課題が残っています。

「リボルバーの会」という、復帰官僚同士が交流するグループも存在しますが、会員数はまだ20人ほど。霞が関では終身雇用や年功序列といった伝統的な雇用慣行が根強く残っており、民間での経験が十分に評価されないケースもあります。ある復帰官僚は、同期との給与差を上司に指摘したところ「同期は雑用もこなしてここまで来た」と返されました。民間で培った知識を活かして業務改善を提案しても「まずは霞が関のやり方を覚えろ」と聞き入れてもらえないこともあります。

金融庁の堀本善雄さんは「中途採用者には生え抜きの官僚にない能力があるが、それが活かされていない」と指摘します。彼は適切に中途採用者を評価し活用できる管理職の必要性を訴え、「公務員らしさだけを求めるなら、そもそも中途採用をする意味がない」と厳しく指摘しています。

こうした現状を変えようと、霞が関の内部からも改革の動きが出ています。中途採用者によるグループ「ソトナカプロジェクト」は2022年、人事院に改革を提言しました。職員や退職者の人脈を活用するデータベースの構築や、公募制を導入し、年次に基づく昇進ではなく能力を基準にする制度への変更を求めています。この提言に基づき、翌年には人事院が優秀な人材の確保策について本格的な検討を開始しました。

中途採用で霞が関に戻った官僚たちは、それぞれのキャリアに意味を見出しています。経済産業省の山本慎一郎さんは、震災支援や地方自治体のアドバイザーとしての経験を持ち、2019年に霞が関に復帰しました。「地方の現場で得た手応えを持って戻ることには大きな意味がある」と語ります。

また、経済産業省の桑原智隆さんは、日米を拠点とするベンチャーキャピタルの幹部として活動しながら、非常勤で経産省にも復帰しています。「民間で最新のトレンドをキャッチしながら、それを霞が関に還元することが最も貢献できる方法だ」と自らの立ち位置に手応えを感じています。彼のように官と民を行き来する「リボルバー」は、今後の霞が関改革において重要な役割を担う存在として期待されています。



四国電力が「アルムナイ採用」導入:元社員再雇用で即戦力を確保


四国電力は、退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」制度を導入します。目的は、他業界で得た知識や経験を活かし、即戦力として再び活躍してもらうことです。このような再雇用制度は近年広がりを見せており、企業と元社員の関係も多様化しています。

「アルムナイ」とは英語で「卒業生」「同窓生」を意味し、四国電力が新たに導入する「カムバック採用」では、転職や家庭の事情で四国電力やその子会社を退職した60歳未満の元社員が対象となります。勤続年数などの条件は設けず、2023年度中に募集を開始する予定です。四国電力は、社外で培った経験や知見を社内で活かしてほしいと期待を寄せています。

また、四国電力だけでなく、香川県内の他企業もこの動きに続いています。百十四銀行は2023年4月から「キャリアリターン制度」を導入し、結婚や出産だけでなく、転職者にも再雇用の門戸を広げました。同様に、香川銀行も退職者を再雇用する取り組みを進めており、他社で培ったスキルを活かしてもらうことを目指しています。

アルムナイ採用は全国的にも広がりを見せ、特に大手企業では数百社が導入しているとされています。採用にかかるコスト削減やミスマッチのリスクを軽減できる点が企業にとってのメリットです。また、地方銀行や電力会社など、地域の主要企業がこの取り組みを始めており、地域でも徐々に浸透していくと予想されます。退職者との関係を切らずに、連絡を取り合い続ける企業側の姿勢が求められており、退職時の対応も含めた企業全体の意識改革が重要です。

実際に、百十四銀行で昨年再入行した女性(44歳)は、退職後に外資系保険会社などで働いていましたが、地域に根ざした銀行で再び働くことを希望しました。再入行制度が拡大されたことで応募し、「以前よりも高いモチベーションで仕事に取り組めている」と話しています。このように、元社員の再雇用は企業と働き手の双方にとって新たな価値をもたらしているのです。



リファラル採用・アルムナイ採用で変わる企業の人材戦略


日本企業による中途採用の手法が多様化しています。社員から知人を紹介してもらう「リファラル採用」や、退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」を導入する企業が増加中です。さらに、採用に特化した子会社を設立する動きも見られます。デジタル化や脱炭素など新たな経営課題に直面する中、高度なスキルを持つ人材の需要が高まり、争奪戦は激しさを増しています。

関西電力では、社員が知人や友人を紹介するリファラル採用を2年前から試験的に開始し、2022年から本格導入しました。これまでに14人を採用し、その一人である森満愛子さん(39歳)はセメントメーカーから転職しました。彼女は在宅勤務が可能で海外業務に携われる環境に魅力を感じ、知人の紹介で関電への転職を決意しました。「希望していた仕事に就け、働きやすい環境も整っていてありがたいです」と彼女は微笑みます。

企業が新たな採用手法を取り入れる背景には、経営環境の急激な変化があります。デジタル化や脱炭素への対応が求められる中、高度なスキルを持つ即戦力が不可欠だからです。ロート製薬は過去に内定を出したものの他社に就職した人材に再び門戸を開く「リベンジ採用」を導入し、みずほフィナンシャルグループは元社員を再雇用するアルムナイ採用を始めています。

必要な人材を確保するため、中途採用専門の子会社を設立する企業も登場しています。JR西日本は10月、AIやデータ処理に精通した人材を採用する「トレイルブレイザー」を大阪市に設立しました。高額な報酬を提示できる別会社を設立することで、優秀な人材を呼び込む狙いがあります。半年で20人程度の採用を目指し、グループ各社に派遣してサービス向上に貢献してもらう計画です。

企業の積極的な採用姿勢を反映し、中途採用の求人倍率は高水準にあります。パーソルキャリアによると、2023年10月の転職求人倍率は2.42倍となり、4年前の約2倍に達しました。特にIT・通信、コンサルティング、人材サービスなどの業種で倍率が高まっています。

転職ビジネスも活況を呈しています。新興企業「HRクラウド」(東京)は、クラウド上で採用業務が行える人事システムを提供。選考のスピードアップにより、企業は本気度を示すことができ、約1000社に導入されています。「スピード感が成否を分ける」と担当者は語ります。

政府もこうした動きを後押ししています。「新しい資本主義実行計画」に労働市場改革を掲げ、7月には人材会社が手がけるリスキリング講座の受講料を補助する制度を開始。3年間で33万人の転職を支援する考えです。

リクルートの藤井薫・HR統括編集長は「企業が多様な人材を獲得しようとする動きは加速するでしょう。今後は外部から受け入れた人材を組織内でいかに活かすかが問われます」と指摘しています。

一方で、転職者のイメージも変化しています。総務省の労働力調査によれば、転職を希望する人は年々増加し、2022年は968万人と過去最高を更新しました。しかし、実際に転職した人は300万人前後にとどまっています。終身雇用が根強い日本では、転職へのハードルが依然として高いのが現状です。

しかし、かつて「裏切り者」と揶揄された転職者のイメージは改善されています。りそな銀行の菊池英勝さん(54歳)は、一度転職した後に古巣に戻り、昇進を重ねて今春、執行役員に就任しました。「外に出たことで顧客や収益性への意識が変わり、その経験が評価されていると感じます」と彼は語ります。りそなホールディングスは元社員の採用を積極的に進めており、「退職した過去はマイナスではない」と人事担当者は説明します。

企業と働き手の関係は大きく変わりつつあります。多様な採用手法の導入や転職者の受け入れにより、企業は新たな成長を目指しています。これからは、外部からの人材を組織内でどう活かすかが、企業の競争力を左右する鍵となるでしょう。



人材不足に対応:横浜銀行などがアルムナイ採用で元社員を再雇用


元社員のカムバックを歓迎する企業の動きが広がっています。人材不足が深刻化し、転職市場が活発になる中、一度会社を離れた「アルムナイ」を再び迎え入れ、即戦力として活躍してもらおうという狙いがあります。社外で得た経験や知見を新たなビジネスに生かすことが期待されていますが、導入には課題もあるようです。

2023年11月7日、横浜銀行(浜銀、横浜市西区)では、約10人のアルムナイが参加するオンライン交流会が開催されました。参加者たちは退職理由やその後のキャリアについて語り合い、外部から見た浜銀への意見も交換しました。2023年まで約15年間勤務していた鷲尾光博さん(39歳)は、「さまざまな経験を共有でき、視野が広がりました。まるで実家に帰ってきたような感覚でした」と振り返っています。

この交流会を企画したのは浜銀で、即戦力となるアルムナイとのつながりを維持し、業界経験者の「キャリア採用」につなげるため、2023年2月に事業を開始しました。自由な交流の場を提供するほか、社内報のような情報も共有し、現在は約120人が参加しています。担当者は「昨年度はキャリア採用に苦戦しましたが、アルムナイがその状況を改善してくれるかもしれません」と期待を寄せます。

「アルムナイ研究所」(東京)の研究員・鈴木仁志さんによれば、アルムナイ採用を導入する企業は全国で数百社に上り、大手企業を中心に広がっているそうです。少子高齢化による人手不足の解消だけでなく、即戦力となる人材の確保や、社外での経験や知識を業務に生かしてもらえる利点があります。アルムナイと新たな共同事業を展開し、ビジネスチャンスを拡大するケースも見られるとのことです。

家庭の事情で退社したアルムナイの採用に力を入れているのは、日揮ホールディングス(横浜市西区)です。エネルギー事業などで海外プロジェクトを多く抱える同社では、海外赴任が多いため、親の介護や子育てを理由に転職する従業員も少なくありません。

同社では「日揮を母校のように」という理念のもと、2019年から毎年10月25日の創業記念日に交流会を開催し、活躍を紹介する記事を配信しています。これらの取り組みが評価され、今年の「ジャパン・アルムナイ・アワード」で部門別最優秀賞を受賞しました。担当者は「アルムナイはその能力の高さを把握しやすいです。戻ってきやすい環境を整えることで、再び活躍してもらえれば」と話しています。

しかし、運用には課題もあります。東京都立大学の西村孝史准教授(人的資源管理論)は、社内でアルムナイ採用の意義や理解が浸透しないまま進めると、現役社員から「仕事を奪われる」「裏切り者が戻ってきた」といった不満が噴出し、士気の低下を招く恐れがあると指摘しています。「単なる人員の補充ではなく、新しい知見や技術をもたらす存在であることを丁寧に説明することが重要です」と述べています。



岡山県が元職員対象の再採用試験を初実施!人手不足解消へ「アルムナイ採用」開始


岡山県は、育児や介護などを理由に退職した元県職員を対象とした初の再採用試験を実施します。今年度の採用試験で予定人数に達しなかった職種を中心に、少人数を募集し、人手不足の解消を図る狙いです。採用は2024年4月を予定しています。

募集する職種は、土木、農業土木、畜産、獣医師、林業、電気、保健師、薬剤師の8職種で、退職時と同じ職種に応募できます。受験資格は、県の正職員として3年以上の勤務経験があり、来年4月1日時点で退職から10年以内で59歳以下の方が対象です。応募書類は12月15日必着で提出し、面接で選考が行われます。

一度組織を離れた人材を再び迎え入れる取り組みは、「アルムナイ採用」や「カムバック採用」と呼ばれ、民間企業を中心に広がっています。県によると、2024年8月時点で12の道県が職員採用で導入しており、県人事課は「人材確保の競争が激化する中で、即戦力の確保につなげたい」と話しています。



再雇用制度強化へ!山口フィナンシャルグループのマイ・リターン制度とは?


山口フィナンシャルグループ(FG)は、グループ傘下の山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行の元社員を対象に、再雇用に関する情報交換を行う「アルムナイネットワーク」の運用を開始しました。この取り組みは、多様な人材の確保を目指しており、ネットワークを通じて元社員との結びつきを強化しようとするものです。

「アルムナイ」とは英語で卒業生や同窓生を意味しますが、現在の日本では転職や起業を目指す人材が増加する中、他社で得た経験やスキルを持つ元社員を再雇用する動きが広がっています。山口FGも、この流れに沿い、2021年度から「マイ・リターン制度」として再雇用を積極的に進めています。

アルムナイネットワークに参加を希望する元社員は、専用サイトに登録することで、山口FGの最新の社内情報やキャリア採用情報、さらには元社員同士が集う交流会の案内などにアクセスできるようになります。この制度を通じて、これまでに13名の元社員が再雇用されていますが、今後は再雇用の推進にとどまらず、元社員との協業の可能性も視野に入れています。

担当者は「元社員と企業の双方にとって価値あるネットワークを構築するため、多くの元社員の参加を期待しています」と述べ、アルムナイネットワークを活用したさらなる関係強化に意欲を示しています。



トヨタ、元社員再雇用を本格化!アルムナイ採用で即戦力を確保


トヨタ自動車は2023年7月26日、退職した元社員を再び迎え入れる「アルムナイ採用」に本格的に乗り出すことを発表しました。企業文化に精通し、即戦力としての活躍が期待できるだけでなく、社外で培った経験や知識を社内で活かしてもらう狙いがあります。

同日付で、勤続年数や職種を問わず登録できる専用ウェブサイトを開設しました。このサイトでは、トヨタの最新動向や求人情報のほか、元社員同士がチャットで交流することも可能です。「アルムナイ(alumni)」とは英語で「卒業生」や「同窓生」を意味します。

選考プロセスは通常と同様に、書類審査や面接を通じて進められます。自動車業界では電動化が急速に進み、自動運転技術の開発などで重要となるソフトウェアエンジニアの応募を特に期待しているとのことです。

元社員の再雇用に力を入れる企業は他にも増えています。キリンホールディングス(HD)は「キャリアリターン制度」を設けており、勤続3年以上の総合職社員が退職から5年以内に再就職を希望する場合に応募可能としています。昨年末までに、この制度を活用して復帰した社員が3人いるそうです。

同様の制度を持つライオンでは、勤続年数や退職からの期間を問わずに応募できます。広報担当者は「多様な働き方が広がる中、一度会社を離れた社員が、さまざまな経験を活かして再び自社で活躍してほしい」と語っています。ベネッセHDも「OBOG人財バンク」に登録した退職者とグループ各社の求人情報を共有しており、再雇用につながっています。


トヨタ自動車、総合職の中途採用47%に拡大!アルムナイ採用で採用方法を多様化


トヨタ自動車は、経験豊富な中途人材の採用を積極的に進めています。総合職における中途採用者の割合は、2022年度に47%まで上昇し、2023年度からは退職した元社員の再雇用も本格化しています。これは、車と同様に「全方位」で採用方法の多様化を図り、高度な専門性を持つ人材の確保を目指しているからです。

元社員の再雇用は「アルムナイ採用」と呼ばれ、退職後に得た経験を活かして即戦力として活躍してもらうことが期待されています。トヨタは2023年7月下旬にアルムナイ採用のウェブサイトを開設し、現在約300人が登録しています。これにより、「戻りやすい環境を整備する」ことで、元社員からの積極的な応募を促進しています。

さらに、トヨタは2019年度から中途採用を強化し、2021年度には社員の知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」を導入、2022年度には転職希望者向けサイトの登録者をスカウトする制度を本格的に開始しました。その結果、総合職にあたる「事技職」での中途採用比率は、2018年度の9%から2022年度には47%まで急増しています。また、新卒採用でも、高卒採用の再開や技術系の大学生・大学院生の学校推薦制度を全廃するなど、門戸を広げています。

このように採用の幅を広げている背景には、車の電動化や自動運転といった次世代技術「CASE(ケース)」への対応が急務となっていることがあります。特にソフトウェア人材の重要性が高まっており、自動運転などではソフトウェア制御の知見が鍵を握っています。トヨタでは、2022年度の中途採用者の約半数がソフトウェア関連の人材でした。

他の自動車大手も多様な人材確保に力を入れています。ホンダはCASE対応のため中途採用を強化し、2022年度の採用者は全体の約半数にあたる526人に上りました。日産自動車も2021年度入社の新卒採用から、就職活動支援会社のウェブサイトに登録された経歴を基に、学生を直接スカウトする制度を取り入れています。

しかし、デジタル化の進展に伴い、ソフトウェア人材は業界を超えた「奪い合い」の様相を呈しています。経済産業省の試算によれば、2025年には自動車業界で自動運転関連のソフトウェア人材が約2万1000人不足すると見込まれています。これにより、自動車各社は高度な専門性を持つ人材の確保に向け、採用戦略を一層多様化させていくことでしょう。



カムバック採用が銀行業界で広がる理由とは?退職者を再雇用するメリット


「カムバック採用」が日本の働き方に新たな風を吹き込んでいます。転職や起業のために一度退職した社員を再び迎え入れるこの制度は、内向きな印象が強い銀行業界でも広がりを見せています。かつては退職者を裏切り者のように扱う風潮すらあった日本の職場ですが、時代とともにその考えも変わりつつあります。

例えば、りそな銀行では2023年4月の人事で、菊池英勝さん(53)が執行役員に就任しました。彼は2005年にりそな銀行を退職し、その後コンサルティング会社で経験を積んだ後、2010年に再び同行に戻りました。大学卒業後、彼は当時のあさひ銀行に入社し、りそな銀行誕生に至る再編を経て、その後、りそなショックと呼ばれる大規模な公的資金の注入という激動の時期を乗り越えました。

しかし、融資以外の金融業務にも挑戦したいという強い意欲が、彼を退職に導きました。彼はその後、コンサル業界で活躍し、数多くの企業を相手にM&A(企業の合併・買収)や資産活用の提案を行いました。経験不足から失敗もあったものの、それらの経験は菊池さんにとって貴重な学びとなり、さらなる成長を促しました。

そんな彼が再び銀行に戻る決断をしたのは、かつての同僚からの「面談を受けてみたら」という何気ない一言がきっかけでした。りそな銀行は当時、相次ぐ退職によって人材不足に直面しており、法人営業の経験が豊富な元行員を再び迎え入れる動きを始めていたのです。菊池さんはトントン拍子で内定を得て、家族を安心させたいという思いから再入行を決意しました。

彼は再び銀行に戻ったことで、以前の知識や経験をさらに深め、事業承継に悩む中小企業の経営者からも厚い信頼を得るようになりました。彼の努力は実を結び、執行役員に昇進した今でも、彼を支えてくれた上司や同僚への感謝の気持ちを忘れていません。

りそな銀行は2020年度から正式に「カムバック採用」を導入し、これまでに24名の応募者のうち5名が採用されています。この制度の利点は、過去に働いた経験を持つため、ミスマッチが少なく、外部で培ったスキルも活かせる点にあります。

日本全体で見ても、このような再雇用の流れは金融業界だけにとどまらず、広がりを見せています。大手の三井住友銀行は2021年度から「カムバック採用」を公式に募集し、地方銀行でも同様の動きが進んでいます。さらに、みずほフィナンシャルグループでは、退職者と継続的に交流する「アルムナイネットワーク」も導入されています。米国ではすでに広く普及しているこのネットワークは、退職者が企業とのつながりを維持し、再雇用やビジネスの機会を広げるための重要なツールとなっています。

このように、退職者とのネットワークを活用する企業が増える一方で、退職者自身も「前の会社に戻りたい」という思いを抱くことが多く、両者にとって大きなメリットがあることがわかります。日本でも、アルムナイネットワークの活用が今後さらに広がっていくでしょう。



元社員再雇用で人材確保強化!アルムナイ採用が広がる企業の新戦略


退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」に取り組む企業が増えています。転職や家庭の事情で離職した人向けに専用の窓口を設け、新規事業や求人情報、社員との交流機会を提供するなど、企業と働く側双方にメリットがあるこの取り組みが広がりを見せています。

「気心の知れた同僚や先輩がいる古巣の職場で、再び働けるなんて思いもしませんでした」と話すのは、日本郵政(東京都)の社員、庄司頼太さん(32歳)です。2023年3月、5年ぶりに同社に復帰し、マネジャーとして新規ビジネスの開発を担当しています。

2013年に入社した庄司さんは、2016年の結婚を機に妻(32歳)が暮らす北陸地方の事業所への転勤を希望し、異動しました。より地域に密着した仕事を求めて2018年3月に退職し、市役所に転職しましたが、希望する住民サービスに直接関わる部署には配属されませんでした。そんな時、同期の元同僚からアルムナイ採用が始まったことを知りました。

「アルムナイ」とは英語で「卒業生」や「同窓生」を意味し、人事分野では「退職者」を指します。庄司さんは専用ウェブサイトに名前や生年月日、元の社員番号を入力して登録しました。そこで同社が新しい組織を立ち上げ、新たな収益源となるビジネスの立案に取り組んでいることを知り、その仕事内容に魅力を感じました。採用面接とは別に行われる現役社員との面談で企業風土に懐かしさを覚え、応募を決意したそうです。

「新しい取り組みが始まったタイミングで、自分の希望に合った仕事の求人を知ることができて良かったです」と振り返ります。

同社では以前から、出産や育児などを理由に退職した元社員の再雇用制度がありましたが、ブランクがあるため給料は下がっていました。一方、2022年9月から本社を対象に始めたアルムナイ採用では、職歴を考慮して給与を決定します。庄司さんの場合、公務員としての5年間の経験を踏まえ、退職時よりも給与が引き上げられました。2023年現在、約300人の退職者が登録しており、これまでに2人の採用につながっています。

人事部グループリーダーの佐藤和記さん(35歳)は「人材獲得競争が激化する中、退職者の再採用を強化する必要があります。さまざまな経験を積んで戻ってきて、力を発揮して活躍してほしいです」と語ります。

アルムナイ採用はキャリアアップを目的に転職した人を呼び戻すだけでなく、親の介護など家庭の事情で離職した人を再雇用するケースもあります。IT企業の「アイティフォー」(東京都)は2023年4月から取り組みを開始し、昨年介護を理由に退職した中堅の元社員を再雇用しました。元の所属部署で人材を募集していることを発信すると、親の体調が回復した彼から応募があり、退職時と同じ職場のためすぐに馴染んだそうです。

人事部長の志村正弘さん(55歳)は「元社員の人柄や能力を把握しており、彼らも業務を理解しているので、採用時のミスマッチが起こりにくいのがメリットです」と強調します。

日本では長年、終身雇用が続いてきたため、退職者が復帰を望んでも情報や相談窓口が少なく、元同僚などの個人的な繋がりに頼るしかありませんでした。企業側も退職者にアプローチする方法がなかったのです。ニッセイ基礎研究所の小原一隆・主任研究員は「オープンな枠組みで企業と退職者が繋がりやすいのが大きな利点です。労働力不足が深刻化する中、この活用機会はさらに広がるでしょう」と述べています。


◆人手不足で企業の関心高まる

アルムナイ採用のノウハウを提供する専門事業者などで構成される「アルムナイ研究所」(東京都)によれば、国内で導入している企業は大手を中心に数百社に上ります。少子高齢化による人手不足を背景に、企業側の再雇用への関心は高まっています。

人材紹介業の「プロフェッショナルバンク」(東京都)が2023年2月に企業経営者や人事・採用担当者299人を対象に行った調査では、退職者を再雇用したことがある企業は67%に達しました。経験のない企業でも69%が「戻ってきてほしいと思う社員がいる」と回答しています。

アルムナイ採用では、登録した退職者に最新の求人情報をメールで提供する企業もあれば、「アルムナイネットワーク」と呼ばれる退職者グループを企業主導で作り、現役社員との交流の場を設けるケースも多いです。専用ウェブサイトの運営を通じて、こうしたサービスを提供する専門事業者が導入を後押ししています。

再雇用の場合、業務を熟知しているため即戦力となるほか、社外での経験や知見も活かせるメリットがあります。また、ネットワークを構築することで退職者同士や企業との交流が生まれ、新たなビジネスチャンスの創出や自社製品・サービスへの愛着維持につながる効果も期待されています。



アルムナイネットワークが再雇用を加速!退職者を即戦力に変える新しい仕組み


近年、従業員の再雇用制度が注目されています。この制度には「定年後再雇用」と「中途退職者の再雇用」の二つのタイプがあり、特に自己都合で退職した人を対象とする「カムバック制度」や「ジョブ・リターン制度」といった形で多くの企業が取り入れ始めています。この背景には、少子高齢化が進む中で労働力不足が深刻化しており、優秀な人材の確保が難しくなっている現状があります。再雇用制度は、企業にとっては即戦力となる人材を迅速に確保できるだけでなく、採用や育成にかかるコストを削減できるというメリットがあります。一方で、再雇用される側も、慣れ親しんだ職場で過去の経験やスキルを生かしつつ働ける利点があります。

厚生労働省が行った「仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査」によると、定年後を除く再雇用制度を導入している企業の割合は、2020年度に3割を超え、2014年度の約2倍に増加しました。また、出産や育児などを理由に離職した女性の約2割が、円滑な再就職を支援する策として再雇用制度を挙げており、一定のニーズがあることが明らかです。

三重県内でも、結婚や出産、配偶者の転勤などを理由に退職した従業員を再雇用する動きが見られます。中には、制度を正式に導入してより柔軟な形で運用する企業もあります。例えば、百五銀行は2022年に再雇用制度を見直し、以前は出産や育児など特定の理由に限定されていた退職理由を緩和しました。この結果、幅広いスキルや経験を持つ人材を積極的に迎え入れることが可能になりました。

さらに全国的には、「アルムナイ(卒業生)」ネットワークという、OB・OGや中途退職者が集まるコミュニティーも注目されています。このネットワークでは、離職者の近況やスキルなどの情報が共有され、企業が再雇用につなげるための大きな役割を果たしています。かつては「一つの企業で定年まで働く」ことが一般的とされていましたが、現在では転職が一般的に受け入れられるようになりました。退職が必ずしもネガティブな選択ではないという認識が広がりつつあり、今後もライフステージに応じた柔軟な働き方と再雇用制度がさらに発展していくことが期待されます。



元社員再雇用で即戦力を確保!群馬銀行がアルムナイ採用を導入


群馬銀行は2022年12月1日、一度退職した人を再び迎え入れる「アルムナイ採用」を開始しました。これは、退職後に得た専門的な知識や経験と、かつての勤務経験を活かしてもらうことを目的としています。

これまで同行には再雇用制度がありましたが、対象は結婚や育児、介護などを理由に退職した行員に限られ、「原則3年以上勤務し、離職から10年以内」という制約もありました。そのため、過去3年間で正行員に復帰したのは女性3人のみでした。しかし、最近は雇用の流動化が進み、20~30代を中心に年間平均約80人が退職している状況です。

新たなアルムナイ採用では、勤続年数や離職期間に関する制限を撤廃し、転職した退職者も応募可能となります。採用選考では、キャリア採用と同様に筆記試験や面接を実施します。

「アルムナイ(alumni)」は英語で「卒業生」や「同窓生」を意味します。同行は最近退職した人々にこの制度を周知する考えで、深井彰彦頭取は2022年11月29日の記者会見で「能力に適した仕事と意欲があれば、即戦力として活躍してもらえます。戻ってもらうきっかけとなる制度にしたい」と語りました。



経団連が「中途採用」を「経験者採用」に統一!企業の採用戦略が変化


経団連は、新卒以外の採用に使われる「中途採用」という言葉を廃止し、「経験者採用」に統一する方針を決めました。これは「中途」という言葉が持つ消極的な印象を取り除き、より円滑な労働移動を促進し、経済の活性化につなげる狙いがあります。

この方針は、2023年春闘に向けた「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)の素案に盛り込まれました。まず、経団連会員企業向けの書類やアンケートで「経験者採用」の表記を統一し、採用活動においてもこの呼称を推奨する方針です。

現在、企業の採用方法は多様化しており、入社後の職務内容を明確にする「ジョブ型採用」のほか、退職した元社員を再び採用する「カムバック採用」や「アルムナイ採用」、社員から知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」などが活用されています。経団連は、これらの採用手法の積極的な利用も呼びかけています。

ただし、経団連が提唱する「経験者採用」がどれだけ広がるかは不透明です。例えば、2000年代に「春闘」を「春季労使交渉」に変更した試みも、一般的な使用には至りませんでした。今回の「経験者採用」がどの程度浸透するかは、経団連の影響力を試す機会となるでしょう。



「アルムナイ採用」が加速!企業が注目する元社員の再雇用と即戦力化


一度組織を離れた人を再び迎え入れる「アルムナイ採用」が、多くの企業で注目されています。アルムナイは「卒業生」「同窓生」を意味し、退職者が社外で得た経験や知識を生かして、即戦力として再び活躍することが期待されています。特に「復帰組」が経営幹部となる事例も増え始めており、これからの出世レースの景色も変わるかもしれません。

損害保険ジャパンの白川儀一社長は、32歳のときに一度退職し、ソフトテニスに情熱を注いだ異色の経歴を持ちます。白川氏は市役所勤務を経て復帰し、「大企業にいると見えなかった顧客に寄り添う視点を学んだ」と語っています。この経験を生かし、現在は2万4000人を率いるリーダーとして活躍しています。

同じく「復帰組」として知られるのが、パナソニックコネクトの樋口泰行社長です。かつて松下電器産業(現パナソニック)に勤めていましたが、転職後にさまざまな企業で経験を積み、25年ぶりに古巣に戻りました。樋口氏は「転職者を囲い込むのではなく、また好きになってもらえる会社でありたい」と語り、より開かれた企業文化を目指しています。

企業の間では、退職者を積極的に再雇用する動きが広がっています。クラレは「カムバック採用制度」を導入し、退職理由を問わず元社員を再び採用しています。また、コンサルティング大手のアクセンチュアもアルムナイ採用に力を入れ、元社員の復帰をキャリアの選択肢として積極的に推奨しています。

エン・ジャパンの調査によると、約72%の企業が退職者を再雇用した経験を持ち、その多くは「本人からの応募」がきっかけです。かつては「裏切り者」と見なされることもあった転職者ですが、今ではその経験を企業の財産として評価する時代が訪れています。少子化が進む中での人材不足が深刻化する日本では、人材の再雇用がますます重要になるでしょう。かつて会社を離れたというだけで門を閉ざすのは、もはや時代遅れかもしれません。







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