2022年の日本の労働生産性は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、時間当たりで30位、1人当たりで31位という結果に終わり、1970年以降で最も低い水準でした。この数値は、円安によるドル換算の影響を受けない購買力平価に基づくものであり、日本の労働生産性の低さを物語っています。しかし、その一方で、実質ベースでの労働生産性の伸び率をみると、日本は他の先進国と比べても遜色なく、むしろ良好な伸びを示しています。この矛盾するような状況をどのように評価すべきなのでしょうか。
一つの要因として挙げられるのが、日本経済の長期にわたるデフレです。労働生産性は付加価値額を労働投入量で割った指標であり、付加価値額は名目GDPに依存します。そのため、デフレによって名目GDPが伸び悩んだ結果、労働生産性も低い水準にとどまっているのです。また、雇用形態の変化も影響を及ぼしています。生産年齢人口(15〜64歳)が1995年をピークに減少している一方で、女性や高齢者の労働市場への参入が進み、全体の就業者数は増加傾向にあります。ただし、こうした層の多くはパートタイムやアルバイトといった短時間労働に従事しており、結果として労働生産性の指標を押し下げる要因となっています。
これらの背景を考慮すると、日本の労働生産性は悲観的に捉えるべきではないともいえます。しかし、2030年代にはさらに深刻な人手不足が予想されており、生産性向上の重要性は一層高まるでしょう。この課題に対する鍵となるのが、ITとデジタル化の推進です。中小企業の生産性向上がよく取り沙汰されますが、大企業も含め、多くの現場で紙ベースの作業や人手に依存したプロセスが依然として存在します。こうした部分をデジタル化するだけでも、生産性を大幅に引き上げる余地があるのです。
SNS上では、「生産性の低さを嘆くよりも、デジタル化に投資すべきだ」「日本の成長余地がまだ残されていることが希望」といったポジティブな声が見られる一方、「デフレ脱却が最優先」といった指摘も寄せられています。日本経済が抱えるこの課題を解決するためには、企業や個人がテクノロジーを活用し、生産性向上を目指す行動が求められます。
今後の日本経済の成長を支えるのは、効率化と創造性の両輪でしょう。労働生産性の向上は単なる数字の改善ではなく、持続可能な社会の実現にも直結しています。そのための一歩を、デジタル化と革新から踏み出すべき時が来ているのです。